年金改革法案が閣議決定され、2022年から年金制度が変わろうとしています。この新年金制度によって、年金の受給開始年齢が拡大。働く高齢者の年金の一部を調整する在職老齢年金の見直し、厚生年金に加入するハードルの引き下げが始まり、65歳以上も働き続ける選択肢が出てきました。
老後のお金に不安を感じる場合、
働き続けたほうが良いのでしょうか?
働き続けると、どれだけ年金が増えるのでしょうか?
ここでは、新しい年金制度の説明と働き方について紐解いていきます。
この記事の目次
2020年の年金制度のポイント
2020年3月3日に年金改革法案が閣議決定されて、年金制度が変わります。今回の改革は主に3つです。
年金受給開始年齢の拡大
1つ目が受給開始年齢の拡大です。2022年4月から受給開始年齢が現在の60歳~70歳から60歳~75歳に引き延ばされて、75歳からの繰り下げ受給が可能となります。75歳まで受給を遅らせれば、受給額は84%アップとなります。
在職老齢年金の見直し
2つ目は、働く高齢者の年金の一部を調整する在職老齢年金の見直しです。現在60歳~64歳の場合、賃金と年金の合計額が月28万円を越すと年金が減額されます。これが、2022年4月から月47万円まで引き上げられます。
厚生年金に加入するハードルの引き下げ
3つ目は、厚生年金に加入するハードルの引き下げです。短時間勤務のパート女性なども厚生年金に加入できるよう、加入要件の一つである従業員数の基準が現在の501人以上からの段階的に引き下げられており、2024年10月には51人以上となります。
2020年の年金制度の改革内容
2022年4月から
- 公的年金・確定拠出年金ともに受給開始年齢を60歳~75歳に拡大
- 働くシニアの厚生年金が調整される仕組みの見直し
- 国民年金手帳から、基礎年金通知書の交付に切り替え
- 年金を担保にした新規貸し付けの廃止
2022年5月から
- 確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げ
- 企業型確定拠出年金は、70歳未満へ引き上げ
- 個人型確定拠出年金は、65歳未満へ引き上げ
2022年10月から
- 101人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金を適用する
- 20歳以上のすべての会社員がiDeCo加入可能に
2024年10月から
- 51人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金が適用される
年金制度が変わる!60歳以降も働いた方がいい?
60歳定年後の人生の選択肢はさまざまです。会社員の方が60歳以降も働き続ける道としては、勤めていた会社での再雇用・転職・企業などが考えられますが、60歳以降も働いた方が良いのでしょうか?ここでは、60歳以降も働くメリット・デメリットについて解説します。
60歳以降も働くことのメリット
会社員として働けば、厚生年金は70歳まで加入し続けることができ、受給額も増えます。扶養家族の妻は引き続き被扶養者となり、健康保険料と国民年金保険料の負担はありません。
[働くことのメリット]
- 老齢厚生年金が増える
- 健康保険に加入。定期健診や健保組合の優遇された制度が適用される
- 専業主婦の妻の社会保険料が要らない
- 遺族厚生年金も増える
60歳以降も働くことのデメリット
60歳~64歳までの会社員で、かつ報酬比例部分の老齢厚生年金を受給する場合、月給との合計金額が28万円を超えると、年金額の一部が削除されることもあります。また、失業給は65歳未満が対象です。
[働くことのデメリット]
- 収入に応じた社会保険料の負担がある
- 65歳以上は失業給付がもらえない
- 収入により、特別支給の老齢厚生年金が削られる
60歳まで働く場合の注意点
60歳以降に年金を受け取りながら会社員として働く場合、収入によっては、年金が削除される場合があります。年金が削除されるなら60以降も働きたくないという人もいますが、受給額が削られないように働き方をコントロールしながら、パワーがあるうちは働き続けて、トータルの受給額をアップさせることが大切です。
新年金制度!60歳以降も働くと年金はどれぐらい増える?
国民年金には、40年加入で満額支払われるというルールがありますが、厚生年金には満額という考え方がありません。そのため、60歳定年後も会社員として働き、厚生年金に加入し続ければ、収入と期間に応じて年金が増えます。厚生年金の加入は70歳まで可能です。
下の表は、定年後に働く年数・定年後の年収とそれに応じて増える年金額の目安を現した早見表です。この表を見れば分かると思いますが、定年後も働き続けると年金は増えて、老後生活の大きな助けとなります。
定年後に働くことでいくら年金は増える早見表
定年後の年収 | 定年後に働く年数 | |
---|---|---|
5年 | 10年 | |
150万円 | 年4万1,100円 | 年8万2,200円 |
200万円 | 年5万5,900円 | 年11万1,800円 |
250万円 | 年6万9,100円 | 年13万8,100円 |
300万円 | 年8万2,200円 | 年16万4,400円 |
350万円 | 年9万5,400円 | 年19万700円 |
新年金制度で良くある質問
2020年に年金制度が変わりましたが、ここでは、年金制度が変わるにつれて、良くある質問をご紹介します。
Q:何歳まで働くのが良いのか?
長く働けば働くほど、受給額は増えますが、老後の経済的不安も少なくなっていきます。しかし、誰しもが70歳まで働いた方がいいのかという決してそうとは限りません。
老後に必要な生活費と定年時の予想資産額から、年金がいくら増えれば経済的に老後の不安がなくなるかを逆算してみると、大体何歳まで働くのがベストなのか計算することができます。
Q:60歳以降働くと年金が減らされるの?
60歳以降も厚生年金制度のある会社で働くと、老齢厚生年金月額と毎月の報酬の合計金額によって、年金が減額されることがあります。(在職老齢年金制度)
基準は「65歳未満」と「65歳以上」で異なり、65歳未満では合計額が28万円以下、65歳以上では47万円以下ならば減額されません。65歳未満の制限28万円以下は厳しめですが、年金の支給開始が60歳から65歳へ引き上げられつつあるため、解決に向かうでしょう。
Q:パートだけど年金を増やすことはできるの?
現在、パートやアルバイトで働く人が厚生年金に加入するには、原則週30時間以上の勤務が必要です。しかし、週20時間以上の短時間勤務でも、従業員数が501人以上の会社であれば、年収105万6,000円以上の条件を満たせば、厚生年金へ加入できます。
現在は、従業員数501人以上がボーダーラインとなっていますが、2022年10月に101人以上、2024年10月に51人以上と段階的に拡大していくので、これらの流れに乗って働けば、時短勤務のパートでも年金を増やすことができます。
繰り下げ受給するとどれぐらい年金額は増えるの?
現行の年金制度では、年金の受給は原則65歳からですが、希望すれば60歳~70歳の範囲で受給開始のタイミングを指定することができます。65歳よりも受給を遅らせることを「繰り下げ受給」といいますが、1ヵ月繰り下げるごとに受給額が0.7%アップします。
年金月額12万円の場合
受給年齢 | 金額 |
---|---|
65歳 | 月12万円 |
66歳 | 月13万80円 |
67歳 | 月14万160円 |
68歳 | 月15万240円 |
69歳 | 月16万320円 |
70歳 | 月17万400円 |
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老後のお金の不安は「定年後の仕事」で解決
老後のお金には2,000万円が必要と言われて、不安に感じている方は多くいます。40代や50代の人の中には「老後資金を蓄えていない」と焦りを感じているかもしれません。
しかし、2022年から年金制度は大きく変わります。年金受給開始年齢の拡大がされ、好きな年齢に年金を受け取れるようになります。また、厚生年金の加入の条件も下がり、時短勤務のパートも厚生年金の加入対象となるのです。そのため、65歳以上も時短で働けば、お金を着実に増やすことができます。
ぜひ、2022年から変わる年金制度に注目をし、時短勤務のパートの方は働き方を見直してみてください。
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