株式投資の「TOB」をご存じでしょうか?自分の保有株式がTOB銘柄になると、大きな利益を出せるチャンスになるかもしれません。
この記事では、TOBの意味やTOB銘柄の株価が値上がりしやすい理由について解説していきます。いざ自分の銘柄がTOB銘柄になったときに困らないよう、TOBに参加する方法も解説します。
TOBの知識を身につけ、株式投資で稼ぐチャンスを逃さないようにしましょう。
この記事の目次
TOBの意味
TOBは、「Take-Over Bid」の略称で、日本語では「株式公開買付」と言います。TOBは、買い付け期間・購入価格・購入する株式の数量を公表した上で、企業が証券取引所を介さず、株式を持っている人から直接購入する方法です。
TOBを行う目的は、株式を大量に手に入れることで会社を子会社化したり、議決権を増やして経営の実権を握ったりするためです。上場企業の場合、大勢の株主が少しずつ株式を持っている状態なので、バラバラの株式を企業が一気に集めるため、TOBを行います。
TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類があります。
友好的TOBの場合、株式を買おうとする企業が株式を買われる企業と合意が取れている状態のことです。一方、敵対的TOBの場合、2つの会社間で合意に至っていない状態で、企業が強引に株式の購入を進めることです。
金融やビジネスをテーマにしたドラマでは敵対的TOBがよく描かれ、ある企業は資金力にものを言わせて強引に買収を進めようとし、買収されそうな企業はそれを避けるために手段を講じる、という攻防が描かれます。
▼TOBが描かれたドラマといえば、こちら
参考:TBS”日曜劇場 半沢直樹〜ドラマ用語解説〜”
TOB発表後の株価は上がる?
TOBが発表されると、一般的には株価が上がります。というのも、株主から株式を譲ってもらうため、取引価格よりも高い価格での購入を提示するからです。
例えば、現在の株価が1000円で取引されているA社の株式があったとします。B社がTOBによってA社の株式を集めようとするとき、1000円より高い金額を提示しなければ、A社の株主は株式を手放そうとしないでしょう。それも、1001円など微妙な上乗せでは、A社の株主は納得しないと考えられます。
そこで、B社はより高い価格である1300円での購入を提示したとします。TOBにおける上乗せ分を「プレミアム」と呼ぶので、この場合は3割のプレミアムがついたことになります。3割も高く売れるなら、A社の株主も悪い気はせず、売却に応じてくれる人が大勢います。このような流れで、B社はA社の株式を大量に集めることができます。
TOBによる株価上昇の背景には、このような「株式を買いたい企業」が値段を吊り上げることがあります。さらに、証券取引所を介さないのがTOBの取引なのに、市場での取引価格も吊り上げられます。
市場での取引価格も上がる
TOBで企業が発行する全部の株式を購入する場合でも、TOBが成立するまでは証券取引所で売買することが可能です。TOBが発表されてから成立するまでは2ヶ月程度の期間があるのですが、その間の株価も上昇するのが一般的です。
上記の例を引き継ぎ、B社がA社の株式を1300円で購入すると発表したケースを考えていきましょう。もともとA社の株式を持っていない人も、TOB発表後の行動によっては、TOBによる値上がりを利用して儲けることが可能です。
TOBが発表されてから成立するまでは一定の期間がかかるのですが、一刻も早く換金したいA社の株主もいます。そのような人は、TOBを待たずに証券取引所で売却しようとしています。
そこで証券取引所を通じて1250円でA社の株式を購入すれば、TOBで1300円で売却できるので、1株あたり50円の利益が出ます。もともとA社の株式を持っていない人も、TOB価格より安く株式を購入すれば、儲けるチャンスがあるのです。
ただし、TOBに参加するためには期限内に申し込みなどを済ませなければなりません。TOB発表後に株式を購入した場合、スケジュールによっては間に合わなくなるリスクがあるので、スケジュールを確認してから行動しましょう。
TOBと株価上昇の事例
参考:日本経済新聞”NTT、ドコモ完全子会社化29日決定へ TOB4兆円超携帯値下げへコスト削減”
実際にTOBによってどれくらいプレミアムがつき、株価が上昇しているのかを見ていきましょう。2020年に大きな話題となったNTTによるTOBの事例を紐解き、TOBによる株価上昇への理解を深めていきましょう。
NTTドコモ(9437)の株価
2020年9月29日に、NTTがNTTドコモを完全子会社化するべく、NTTドコモの株式を全て購入するためTOBを行う、と発表しました。NTTからの正式な発表の前に日経新聞が報道したため、発表前から株価が大きく上昇していました。
TOBの報道が出る前日28日の株価の終値は2775円でしたが、日経新聞がTOBを報じた29日は急上昇してストップ高の3213円で取引されました。29日にTOB価格が3900円と公表されたため、30日以降は3900円より少し少ない3880円前後で取引されています。
一般的には、TOBのプレミアムは3割程度とすることが多いのですが、NTTはTOB発表前の株価に約4割のプレミアムを乗せる形となりました。市場の価格もTOB価格に追従し、上昇した結果となっています。このように、TOBが発表されると買収される企業の株価は、基本的には上昇します。
保有株式のTOBが発表されたときの対処方法
さて、皆さんが保有している株式も、いつTOBの対象になるか分かりません。
しかし、頻繁に経験することではないため、自分の保有銘柄がTOBの対象になったら、どうしたら良いのか分からず困ってしまう人も多いです。
保有銘柄のTOBが発表されたら、株主は何をすれば良いのでしょうか。株主がやるべきことを、順番に解説していきます。
証券会社からの案内を確認
まず、TOB銘柄を保有している証券会社からの案内を確認します。TOBが発表されてから3営業日以内には、専用の案内ページができていることがほとんどです。
具体的には、GoogleやYahoo!などで「証券会社の名前 TOB銘柄の社名 TOB」と検索すれば、ページが見つかるはずです。もし自力で見つけられなかったら、電話で問い合わせるなどして案内してもらいましょう。
TOBに参加するか決める
証券会社のTOB専用のページで、TOBに参加する場合とそれ以外の場合について案内があると思います。TOBに参加せず、証券取引所で売却したり、そのまま保有し続けたりすることもできるので、TOBに参加するかどうかを考えましょう。
例えば、1000円で株式を買ったのに500円に下落しており、TOB価格が700円だった場合、TOBに参加すると300円の損失が確定してしまいます。このようなケースでは、TOBに参加するのが必ずしもお得とは言えないので、保有し続ける選択をする人もいるでしょう。
ただしNTTドコモのように上場廃止を予定している場合、そのまま保有し続けることは現実的ではありません。TOBに参加するか、証券取引所で売却するのが良いでしょう。
ここから先はTOBに参加する場合を想定して手順を解説していきます。TOBへの参加申し込みには期限があるため、できるだけ素早く行動しましょう。
公開買付代理人の口座を開設する
TOBを行う会社の代理人となる証券会社に、口座を持っているか確認します。口座を持っている方は、次のステップに進んでいただいて構いません。
TOBに参加するには、公開買付代理人の証券会社で株式を保管している必要があります。公開買付代理人で口座を持っていない場合、すぐに口座開設の申し込みをしましょう。
株式の移管手続きをする
TOB銘柄を公開買付代理人の口座で保管していない場合、株式の移管手続きを行います。TOB銘柄を保管している証券会社で、移管の申し込みを行いましょう。
TOB銘柄を公開買付代理人の口座で保管している場合は、次のステップに進んでいただいて構いません。
TOBへの申し込みをする
公開買付代理人の口座で株式を保管している状態になったら、TOBに申し込みます。公開買付代理人から申込書類が届いていない場合は請求し、TOBに参加するための申し込みを行いましょう。
以上がTOBに参加するための流れです。最後のTOBへの申し込みには期限があるため、それまでに公開買付代理人での口座開設や株式移管を済ませる必要があります。意外と余裕が無いケースも多いので、自分の保有銘柄がTOB銘柄になったら迅速に行動しましょう。
迅速に行動してTOBのチャンスを生かす
TOB銘柄になると株価が上昇することや、TOBに参加する方法などを解説してきました。
自分の保有銘柄がTOB銘柄になり、株価が値上がりすると非常に嬉しいものです。
しかし、どう手続きをすれば良いのか分からず困ってしまい、面倒くささを感じてしまう人も多いです。放置しているとTOBに参加できなくなってしまうので、記事中で解説したように迅速に行動する必要があります。
せっかくプレミアムをつけて売却できるので、TOBのチャンスを生かして株式投資でしっかり利益を出しましょう。
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