はじめの一歩

有価証券報告書とは?銘柄分析の必須ツールの見方を覚えよう

有価証券報告書

有価証券報告書は、企業の決算内容がこまかく記載されている資料です。

銘柄分析を行う上で、有価証券報告書を理解しておくことは重要といえるでしょう。しかし有価証券報告書は、数十ページから数百ページとなり、大変ボリュームがある資料です。そのため要点を絞って理解していく方が効率的といえます。

そこで今回は、銘柄分析において必須ツールともいえる「有価証券報告書」の見方について徹底的に解説していきます。

有価証券報告書とは?

まずは有価証券報告書について簡単にまとめた一覧表があるので、以下をご覧ください。

項目
内容
開示日
事業年度終了後3カ月以内
提出義務の会社
一定の条件に該当する会社
提出先
内閣総理大臣と証券取引所
閲覧方法
企業のHPなど

有価証券報告書とは、企業の現在の状況や将来性を表す資料のことで、金融商品取引法に基づいて作成されます。主な目的として投資家に経営の透明性を示し、市場の公正化を狙い社会に情報開示を行います。

有価証券報告書を見ることで、その企業の経営状態が細かく確認でき、投資すべきかどうかを判断できるといえるでしょう。

なお有価証券報告書は、全ての企業に提出が義務付けされているわけではありません。以下の4つに該当する場合のみが対象です。

  1. 金融商品取引所に上場されている有価証券
  2. 店頭登録されている有価証券
  3. 募集または売出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券
  4. 所有者数が1000人以上の株券(株券を受託有価証券とする有価証券信託受益証券及び株券にかかる権利を表示している預託証券を含む。)または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く。)、及び所有者数が500人以上のみなし有価証券(ただし、総出資金額が1億円未満のものを除く。)

引用元:関東財務局 企業内容等開示(ディスクロジャー)制度の概要

閲覧方法は企業のHP以外にも以下の場所で閲覧することができます。

  • 金融庁が運営する「EDINET
  • 政府刊行物センターや書店

では有価証券報告書と混同されやすい「決算短信」とは何が違うのでしょうか? 以下で詳しく解説していきます。

決算短信との違いは?

有価証券報告書を分析している男性
有価証券報告書と決算短信の違いについて、簡単な一覧表がありますので以下をご覧ください。

有価証券報告書 決算短信
情報の正確性 確定した情報 速報のため一部仮の数字も
情報量 多い 少ない
開示日 決算日後3か月以内 決算日後45日以内
監査の有無
株式市場への影響 小さい 大きい
法令等 金融商品取引法 取引所のルール

まず有価証券報告書と決算短信は開示する目的が異なります。

有価証券報告書は金融商品取引法に基づき、投資家や市場にに確定した情報を開示します。内容は全て確定した情報で、正確性がある情報であることが特徴です。また監査法人などの監査を経るため、開示までに時間がかかります。情報量もとても多く、数百ページにおよぶこともあります。

一方決算短信は、速報性を重視するため、有価証券報告書に比べ情報量が少ないことが特徴です。ただし企業情報の速報であることから、株式市場に与える影響が大きいといえます。実際に決算短信の結果で、株価が大きく動くことはよくあります。

これらをまとめると、決算短信で速報を掴み、時間をおいて有価証券報告書で企業の状況を再確認するという流れで銘柄分析を行うことが一般的です。どちらか一方ではなく、両方を上手く活用できることが銘柄分析おいて重要といえるでしょう。

財務諸表
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ではボリュームがある有価証券報告書をどのように理解すべきか、以下でポイントを詳しく解説していきます。

有価証券報告書で見るべきポイントはこの4つ

パソコンとスマホを使って銘柄選びをしている男性
有価証券報告書はとても情報量が多く、全てを理解することは困難といえます。そこでポイントを絞って理解していくことが重要です。有価証券報告書は以下の大きく4つの構成から成り立っています。

  1. 企業の概況
  2. 事業の状況
  3. 提出会社の状況
  4. 経理の状況

それぞれについて見ていきましょう。

①企業の概況

引用元:ソフトバンク2020年度四半期報告書(第35期第1四半期)

有価証券報告書の最初に記載されている内容が企業の概況です。上記の通り、ここには「売上高」「利益」「キャッシュフロー」などが記載されています。多くの場合、上記のソフトバンクの有価証券報告書のように、前年同期と前年度の情報も載せてあります。

今回の場合は四半期の有価証券報告書であるため、前年同期と比べて数字がどう変化しているかを確認できるでしょう。

特に注目すべきは、「売上高」と「営業利益」の2つです。まず売上高ですが、企業が製品やサービスを販売して売り上げた数字がこれに該当します。当然売上高が前年同期と比較して落ち込んでいれば、業績が悪化し株価が下落する可能性が高まります。

一方営業利益については、企業の「本業の儲け」であるためよくチェックしておくといいでしょう。先ほどの売上高は、製品やサービスの販売で発生した人件費や仕入れが含まれていません。営業利益は売上高からそれらの費用を差し引いた金額が表されます。

営業利益が前年同期に比べて落ち込んでいれば、売上高が落ちているか、人件費や仕入れにお金がかかっていることが考えられます。たとえば以下の場合を考えてみましょう。

◆A社の売上高と営業利益

  • X年の売上高は10億円
  • X年の営業利益は2億円
  • X+1年の売上高も10億円
  • X+1年の営業利益は1億円

上記の例の場合、X年とX+1年で売上高に変化がないにも関わらず、営業利益がX+1年の方が少なくなっています。つまりX+1年はX年に比べて、人件費や仕入れが多く発生していると判断できます。

ただしこれは悪い状況ではない場合もあり、たとえば事業拡大のために採用を強化して人件費が膨らんでいる可能性があるかもしれません。このように有価証券報告書の数字を見る場合は、なぜその数字になったのかを徹底的に分析する必要があるといえるでしょう。

続いて②事業の状況について見ていきます。

②事業の状況

引用元:トヨタ自動車 有価証券報告書・四半期報告書(2021年3月期 第1四半期)

上記の画像は事業の状況の一部を抜粋したものです。

事業の状況の欄は銘柄分析において特に重要な部分といえます。なぜならば決算を受けて、今後の経営方針が記載されているためです。

まず最初の項目が、「事業等のリスク」です。ここにはマーケットの状況をはじめ、競合の増加や季節要因、取引先の状況による会社が抱えるリスクが記載されます。今回のトヨタ自動車の場合は、リスクの記載がありませんでしたが、記載されている場合は会社が抱えるリスクをしっかりと把握しておきましょう。

続いて経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析が記載されています。ここには決算によって明らかになった状況を踏まえ、会社側の見解を確認することができます。

特にトヨタ自動車などの複数の事業を展開している企業は、「事業別セグメントの業績」をよく確認しましょう。どの事業が好調か不調なのかを確認し、それが外部要因によるものなのか内部要因なのかを分析していきます。

そしてグローバル企業であれば、「所在地別の業績」についてもチェックしましょう。今回のトヨタ自動車は国内以外にも、北米の売上が大きく業績に影響してきます。よく確認しておくといいでしょう。

その後は「財政状態の状況」「キャッシュ・フローの状況」が記載されています。特にキャッシュ・フローの状況は、対象となる期間において企業がどのようなお金の使い方をしたのかを確認できるため、よく見ておくといいでしょう。

続いて③提出会社の状況を見ていきましょう。

③提出会社の状況

引用元:ソニー 有価証券報告書等 2020年度 第1四半期

上記の画像も提出会社の状況の一部を抜粋したものです。

提出会社の状況には、株式の発行数や大株主の状況などを確認することができます。大株主の対象は発行された株式の5%を超える株主で、保有してから5営業日以内に内閣総理大臣(金融庁)に報告する義務を負います。

ここでの注目点は大株主にどのような人がいるかです。今回のソニーの場合は、外部の企業などが大株主であることが確認できます。これは株主総会などで、外部からの発言力が強まる可能性があります。

株主によって、配当上げに積極的な人もいれば、業績改善に積極的な人もいるため、どのような株主がいるかもしっかり確認しておきましょう。一方大株主が自社の社長や役員などが多い場合、会社を成長させるモチベーションが高くなり、株価上昇のために積極的に動く可能性があります。

銘柄分析において、どのような人が株主なのかもしっかり確認しておきましょう。

では有価証券報告書で見るべき最後のポイントである、経理の状況について見ていきましょう。

④経理の状況

引用元:三菱商事 有価証券報告書・四半期報告書(2020年度第1四半期報告書)

上記の画像も経理の状況の一部を抜粋したものです。

経理の状況には財務諸表を作成した方法や、監査を行った監査法人について記載されています。またその後には、資産や負債の状況をはじめ、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などの詳細が記載されています。

特に財務三表と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書は、銘柄分析を行う上では必須のツールといえるでしょう。

これらの情報は決算短信には載っていない情報であるため、企業を細かく分析したい人は活用してみてください。

ただし財務三表を理解するためには、基礎的な会計や簿記の知識が必要であるため、全てを理解できるためには少し時間がかかるかもしれません。

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有価証券報告書はポイントを絞って読み解こう

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有価証券報告書について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

有価証券報告書は決算短信と異なり、情報量も多く理解するのに時間がかかってしまうでしょう。そのためポイントを絞り、重要な点のみ確認していく必要があるといえます。

株式投資をするのであれば、有価証券報告書に何が書かれており、どこを見るべきかなど、最低限抑えるべきことはしっかり理解しておきましょう。「先輩にすすめられたから」や「Twitterで話題になっていた」などの根拠だけで銘柄を決めるのは大変危険なことです。ノウハウをしっかり学んで取り組みましょう。

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