空売り規制をわかりやすく解説

空売りとは自分が株式を保有していなくても、証券会社などから株式を借りて、借りてきた株を売り買い戻すことで利益を出す取引を指します。たとえばAという銘柄1株借りてきて、1株=500円の時に売却します。その後このAという銘柄が1株=400円下がりました。この差額100円(500円−400円)が利益となる取引が空売りです。

空売りについて詳しく知りたい方は、『空売りとは?5分でわかりやすく解説』をチェック!

この空売りを利用して取引することで、上昇相場の時だけでなく、下落相場の時でも利益が出せます。そのため株式投資を行う方の多くは、一度は空売りについて興味を持つものです。

しかし空売りが積極的に行われすぎると、株価の意図的な売り崩し行為に繋がるかもしれません。そのため新規の空売り注文を出す際に価格規制を行う「空売り規制」が設けられているのです。

違反と判断されると、30万円以下の過料が課される可能性があるため、空売り規制にどのようなルールが設けられているのかしっかり確認していきましょう。

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空売り規制の新ルール「トリガー方式」とは?

空売りの新ルールとして、2013年11月5日に空売りされる銘柄が一定の条件を満たした場合、「トリガー方式」が適用されるようになりました。このトリガー方式では、「トリガー値段」というものが定められ、株価の当日基準値段×(1-10%)に該当するかどうかが焦点となります。

空売り規制がかかるのは、各銘柄について取引時間中に「トリガー値段」以下の株価で約定した直後から適用されます。つまり前営業日終値などから算出される当日の基準価格から10%以上下落して取引が成立している銘柄は、すべてトリガー対象銘柄となるのです。

わかりやすく図にすると以下のようになります。

引用元:SMBC日興証券

上記の例で見ていくと、当日の基準価格は1,000円となっています。そしてこの時のトリガーの価格は、1,000円から10%下落した900円となります。つまりトリガー価格(900円)に触れていない901円であれば空売りは可能ですが、900円以下の取引ではトリガーに触れるため、この価格で空売りを行うことができません。これが空売り規制です。

また信用新規売り注文は、「価格規制の適用前」においても直近の公表価格よりも低い指値で注文することは可能ですが、値段を指定しない「成行注文」や「トリガー値段以下での指値注文」を発注することはできません。

成行注文(※)では、トリガー価格以下で約定してしまい、トリガー価格に触れてしまう可能性があるためです。このように空売りには買い注文とは異なるルールがあることをよく理解しておきましょう。

※成行注文
成行注文とは、「このくらいの株価で買う」という注文方法です。成行注文のメリットは、希望価格に幅があるので約定しやすいことです。デメリットは希望価格と離れた株価で購入してしまうことがあることです。
株の買い方-どこでどうやって?株初心者にイチから解説-より

空売り規制の対象は51単元以上

ただしトリガー価格に触れてしまえば、全てが空売り規制となるわけではありません。たとえば個人の場合は、直近取引価格以下で50単元以下であれば空売り規制の対象とならないのです。

ここで「50単元」とは、たとえば100株単位の銘柄であれば、5,000株(50×100株)、1,000株単位の銘柄であれば、50,000株(50×1,000株)となります。これだけの株式数となると、個人ではなかなか取引できない金額となるため、多くの個人投資家は空売り規制を気にしすぎなくてもよいでしょう。

ただし50単元以下の取引であっても注意点があります。それは一度に50単元以下の取引をしていても、短期間で明らかに連続して信用売りをしていた場合は違反行為とみなされる可能性がありますので、注意してください。

たとえば午前9時に20単元を空売り、午前10時に20単元を空売り、午後2時に30単元を空売りなど、一度ではなくても短期間で連続した信用売りをしていると、違反行為とされる可能性があります。

空売り規制されて当日に株価が回復した場合は?

基本的に空売り規制となった銘柄は、翌営業日の取引終了まで空売り規制が適用されます。ただし複数の市場に上場している銘柄は注意が必要です。

たとえば東証一部と名証、福証と3つの証券取引所に重複上場していると、売買高に大きな違いが出てきます。当然ですが、東証一部に上場している銘柄の方が売買高が高くなります。

この場合は、主たる市場でトリガー接触となった時点から翌営業日の取引終了まで価格規制が適用されますが、主たる市場以外(名証や福証など)でも翌営業日終日の適用となることに注意してください。ただし主たる市場以外(名証や福証など)でトリガー接触となった場合は、その市場の大引けまでの規制となり、他市場(東証一部など)や翌営業日の規制はありません。

ちなみに空売り規制の情報については、毎日東京証券取引所のHP上に「空売り規制に関する情報」において確認することができます。その他、お使いの証券会社のHPにも掲載されているため、事前に確認しておきましょう。

空売り価格規制トリガー抵触銘柄一覧
参考:JPX日本取引所グループ『空売り規制に関する情報』より

空売り規制の抜け道としてよく考えられること

”複数の口座を利用した信用取引なら規制から逃れられるんじゃないか?”
これは空売り規制の抜け道として、よく考えられることですが、残念ながらできません。金融機関は信用調査や、税金などの観点から他金融機関と個人情報を連携し合うことがあります。

そして空売りの発注のタイミングや形態等から関係する口座と思われる状況で、合計数量が51単元以上となっている場合は、「空売り規制」の違反なのでは? と疑われる可能性があります。また他にも以下のようなことが空売り規制の抜け道として考えられます。

空売り規制の違反行為

  • 家族名義と考えられる口座で合計数量が51単元以上となる信用新規売り
  • 個人名義の口座と関係すると考えられる法人口座で合計数量が51単元以上の信用新規売り
  • 他社口座を利用して合計で51単元以上となる信用新規売り

もしこれらに該当し、違反と判断されると、30万円以下の過料が課される可能性があるため、ルールをしっかり守って空売りを行いましょう。

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空売り規制を強めると相場はどうなるのか?

チャート
空売りは決して悪い行為ではなく、一つの投資手法として確立されています。個人投資家はもちろん、ヘッジファンドなどの機関投資家も積極的に空売りを仕掛け、利益を追い求めているのが現状です。

ただ空売りについては、たとえば企業の悪い決算や不祥事など、明らかに株価が下がる要因とわかれば、投資家はこぞって空売りを仕掛けます。そうなると株価の下落に歯止めがかけられなくなり、場合によってはその銘柄だけではなく、その業界や業種にまで波及し、日本株全体を押し下げてしまう可能性があります

そのため一定の価格(トリガー価格)に触れた銘柄は、これ以上株価が下がらないように、規制をかけて株価の維持を行う規制が入るのです。

その中で「空売りを禁止してしまえばいいのでは?」という疑問も浮かんでくるかもしれません。しかしこちらについては現実的ではないでしょう。なぜならもし空売りを禁止してしまうと、株価のボラリティ(価格変動の度合い)がなくなります。

どんな株式も空売りができないということは、株価を上昇させる為のネタがなくなるわけですから、仕手株をメインに取引している投資家は市場から去っていくでしょう。

また空売り規制の強化、禁止をすることで、日本の大型株(トヨタ自動車やソフトバンクなど)を保護していると考えることもできます。実際に日本の株式市場を見てみると、これらの大型株が市場に与えるインパクトが大きいです。

空売り規制をしていなかった場合、もしこれらの大型株に悪い材料が発生し、株価が下がることがわかった場合、株価の下落に歯止めがかからなくなります。そうなると日本全体の株価を下げて、不景気に突入してしまう懸念もあるのです

意図しない違反をおかさないようルールの勉強が必要

株セミナーの様子
空売り規制は、たとえ意図的ではなかったとしても、違反とみなされてしまうことがあります。どのような法律でもそうですが、「知らなかった」では許されないのです。

特に信用取引などの空売りには、今回お伝えしたように様々な規制があるため、自分にはどのような規制が該当するのかよく確認しておいてください。だいたいの場合は、お使いの証券会社のHPに注意事項が記載されていますので、よく確認しておきましょう。

投資は、”うまい話に騙されないようにするため”、”正しくルールを守ってより安全に行うため”に、しっかり基礎知識を学ぶことが重要です。わからないことや、不安に思ったことをその場で質問できる「セミナー」という勉強方法は、株への理解度が加速します。無料で開催されているものも多いので、積極的に活用しましょう。

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