最近、目にする機会が増えてきた「貯蓄から投資へ」という標語。
銀行にお金を預けておくだけで5%などの利息がついたバブル期とは異なり、今の銀行の金利は微々たるもの。
お金を増やしたいなら、自力で資産運用をしなければならない時代になっているのです。
「資産運用」と聞くと、難しそうなイメージや、一部のお金持ちだけがやっているような印象があるかもしれません。
しかし、最近では一般のサラリーマンや主婦なども簡単に始められるようになってきています。
税金面で優遇される「NISA」や「つみたてNISA」という仕組みを上手に使い、老後に向けたお金などの資産を増やしている人もいるのです。
「NISA」や「つみたてNISA」に対して、名前が英語で難しそう、など何となく苦手意識を抱いている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、初心者にも分かりやすくNISAとつみたてNISAについて解説していきます。
この記事の目次
NISA・つみたてNISAとは何か?
まず、NISA(ニーサ)とつみたてNISAの違いを説明します。
ここからは、つみたてNISAとの区別をつけやすくするため、NISAのことを「一般NISA」と呼ぶことにしましょう。
いずれも日本に居住する20歳以上の人なら利用できる制度です。
(未成年者向けにはジュニアNISAがあります)
【一般NISAについて】
一般NISAとは、5年間にわたって年間120万円までの投資を行って得られる利益が非課税となる制度です。
国内株式、海外株式、投資信託等といった幅広い商品に投資をすることができるのです。2014年から始まり、2023年まで申し込める制度です。
【積み立てNISAについて】
つみたてNISAとは、最大で20年という長期間、年間40万円までの投資を行い、資産を積み立てる制度です。
金融庁が厳選した投資信託に投資することができます。
20年間という長い期間、コツコツと積み立てて投資を行う制度なので、老後の資産形成など、将来の備えに向いている制度です。
この項目では一般NISa・つみたてNISAともに共通する大きな特徴である「非課税」について解説します。
一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間も利益が非課税に
一般NISAは5年間、つみたてNISAでは20年という期間で資産運用をする制度ですが、その間に発生した利益に対して税金はかかりません。
一般NISAを利用すると毎年120万円ずつ投資ができるので、5年間を通算すると最大で600万円の投資を非課税で行うことが可能です。
つみたてNISAなら、1年間で40万円ずつ20年間投資した場合を通算すると、最大で800万円の投資を非課税で行えます。
一般的な資産運用では、投資で得られた利益に税金がかかります。
(2019年4月現在は20.315%)
一方、一般NISA・つみたてNISAなら、運用で得られた利益が期間中は非課税となることが最大の特徴なのです。
余った非課税枠の繰り越しはできない
まず、つみたてNISAの場合を例に解説します。
もし、1年間で40万円の枠を使いきれず余ってしまった場合、余った分を翌年に繰り越すことはできません。
例えば、1か月に3万円ずつつみたてNISAで投資をした場合、1年間で36万円の投資額となります。
最大で40万円まで使えるので4万円余ってしまいますが、翌年に繰り越すことはできないので注意しましょう。
つみたてNISAの設定では、毎月または毎日の自動積立を行うことができます。
しかし定期的な自動積立では、上述のように非課税枠が余ってしまいます。
最大の40万円まで非課税枠を使い切りたい人は、ボーナスの入る月などに特別に積立額が多くなるような設定をしておくと良いでしょう。
一般NISAの場合も、余った枠を翌年に繰り越すことはできません。
つみたてNISAとは異なり、自動積立の設定ができないので、年間120万円の非課税枠を自分で管理する必要があります。
一般NISA・つみたてNISAの商品の違い
年間の非課税枠や運用期間だけでなく、一般NISAとつみたてNISAは投資できる商品も異なります。
商品の違いを踏まえると、つみたてNISAの方が投資初心者向けの制度と言えるでしょう。
それぞれの違いを理解し、自分に合った投資にチャレンジしてみてくださいね。
つみたてNISAで積み立てる商品
投資といえば株式を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
残念ながら、つみたてNISAでは株式の売買はできません。
長期的な資産形成を前提とした制度なので、「投資信託」という商品にのみ、投資することができます。
一口に「投資信託」といっても、その商品内容は様々です。
投資信託とは運用のプロに資産運用をお任せする商品で、プロによる投資の方針や投資先が異なるため、商品にも違いが出てきているのです。
つみたてNISAで保有する商品を選ぶときは、自分が許容できるリスクと欲しいリターンを考えましょう。
大きなリスクを取ってでも大きなリターンを追求したい人は株式系の投資信託を多く、リターンは少なくても良いからリスクを下げたい人は国債系の投資信託を多く購入する、など、選定方法も様々です。
一般NISAで取引できる商品
細かいことは証券会社にもよりますが、一般NISAを利用すると基本的に、国内株式、海外株式、投資信託といった銘柄の取引をすることができます。
以後、国内株式と海外株式をまとめて「株式」と呼んでいきましょう。
上述したように、投資信託の購入はつみたてNISAでもできますが、株式の買付けや売却は一般NISAでしかできません。
個別の企業が発行する株式をマーケットで売買すると、その売値と買値の差で儲けたり、株主に還元される配当を貰ったりして収入を得ることができます。
一般的にはこれらの利益へも課税されますが、一般NISAを使うと非課税になるのです。
ただし、個別の株式の売買をするためには、その企業の経営状態を把握したり、経済動向を理解したりしなけらばならず、情報収集が欠かせません。
初心者が自力で情報を取捨選択したり、誤った情報に惑わされないように投資をするのは難しいかもしれません。
そのため、個別の株式への投資は中級者以上におすすめされるのが一般的です。
つみたてNISAが初心者におすすめの理由
上記のとおり、投資の初心者には一般NISAよりもつみたてNISAの方が簡単に始められるのでおすすめです。
運用のプロに資産運用をお任せできる投資信託がメインのつみたてNISAなら、これから投資を始める人にとってもハードルが低く感じられるのではないでしょうか。
投資の初心者につみたてNISAを勧めるのには、他にも理由があります。
以下の3つのポイントがあるので、今まで投資をしたことがない人も始めやすい制度になっているのです。
- 金融庁が選んだ商品から選べる
- 途中で引き出すことができる
- 無理のない金額で投資ができる
1. 金融庁が選んだ商品から選べる
世の中には星の数ほどの金融商品があり、それぞれ特徴が異なります。
初心者にとっては、商品を選ぶだけでも大変です。
しかし、つみたてNISAは投資できる商品(投資信託)が限られています。
それは、多くの商品から金融庁が厳選した投資信託のみに投資できる仕組みだから。金融庁が定めた基準をクリアした、手数料が安く長期の資産形成に向いた投資信託に絞り込まれているのです。
そのため、投資初心者であってもつみたてNISAなら投資商品選びに困ることが比較的少ないです。
金融庁のお墨付きの投資信託の中から、バランスよく商品を選びましょう。
一般NISAの場合、金融庁などの機関が商品を選んでくれるわけではありません。
星の数ほどある金融商品から自分に合った商品を厳選しなければならないので、初心者にはハードルが高い可能性があります。
2. 途中で引き出すことができる
つみたてNISAは年金などと異なり、いつでも解約したりお金をお引き出したりすることができます。
急にお金が必要になったときに引き出すこともできますし、収入が減ってしまい積み立てが難しくなったら止めることもできます。
資産運用が初めての初心者の方でも、途中でお金を引き出すことができることが分かれば、つみたてNISAを始める勇気が湧くのではないでしょうか。
ただし、お金を引き出した分の非課税枠は復活しないことに注意してください。
期間の途中で引き出せるのは、一般NISAも同様です。
また、引き出した分の非課税枠が復活しないことも同様となります。
3. 無理のない金額で投資ができる
最大でも1年間に40万円なので、1か月の投資金額にならすと3万円強となります。
1か月に3万円強であれば、収入の一部を当てたり家計を節約したりして捻出することも可能と考えられます。
少額から始められるのに、20年間続けられたら800万円以上の投資額となります。
運用が上手くいけばもっと増えていることでしょう。
つみたてNISA運用益には非課税のメリットがあるため、利益も大きくなりやすいです。
少額ずつの投資を頑張っているうちに、老後のための大きな資産形成ができる優れた制度と言えるでしょう。
一方、一般NISAは年間に120万円以内の投資による利益が非課税となる制度。
投資上級者のデイトレードのように少額の売買を繰り返す取引であればすぐに到達する上限ですが、初心者の場合は難しいのではないでしょうか。
毎月少しずつお金を捻出し、コツコツと積み立てていく投資の方が気軽に始められるので、一般NISAよりもつみたてNISAの方が初心者向きと考えられます。
一般NISA・つみたてNISAの注意点
初心者にも簡単に始められ、運用益が非課税となるメリットだらけのつみたてNISAですが、注意点もあります。
最も注意しなければならないポイントが「元本割れ」です。
一般NISAの場合も同様で、元本割れのリスクはあります。
また、一般NISAとつみたてNISAの切り替えは自由に行えるわけではありません。
この制度についても注意点として詳しく見ていきましょう。
元本割れの可能性はある
投資である以上、失敗するリスクもあります。預貯金や保険とは異なり、元本が保証されていないことは理解した上で、一般NISA・つみたてNISAを始めましょう。
元本が変動するのが投資なので、運用期間中に元本割れして、運用成果がマイナスになってしまう可能性はあります。
5年あるいは20年という非課税期間が長い投資なので、長い目で見守る投資と捉えてください。
年金の代わりとなるような資産の形成を目標とするなら、手堅くコツコツと儲けるつもりで、リスクの少ない投資対象を選ぶと良いでしょう。
ただし、元本割れの可能性があるのは投資全般に言えること。一般NISAやつみたてNISAだけでなく、すべての投資に当てはまる注意点です。
1円でも元本割れを許容できないのであれば預貯金で運用するしかありませんが、定期預金であっても最大で0.5%程度の金利です。
株式投資なら5%程度の利益を狙えるので、それに準じる投資信託も定期預金より大きな利益が期待できます。
多少のリスクを取ってでも、一般NISAやつみたてNISAで資産運用をするメリットは十分にあると考えられます。
一般NISA・つみたてNISAの切り替えについて
一般NISAを使っている人がつみたてNISAに切り替える場合や、その逆の切り替えを行うことは可能です。
口座開設した証券会社に申し込み、手続きを行うだけです。
ただし、年単位での切り替えとなるため、自由なタイミングで変更することはできません。
分かりやすさのため、一般NISAからつみたてNISAに切り替える場合を例に説明します。
つみたてNISAから一般NISAに切り替える場合は、言葉をそのまま入れ替えてください。
まず、今年に入ってから一般NISAでの取引を全く行っていない場合、今年からつみたてNISAに切り替えることが可能です。
一方、今年すでに一般NISAで取引を1回でも行った場合、つみたてNISAに切り替えられるのは翌年からとなります。
1年の途中で使う制度を切り替えることはできません。どちらを使うのが自分に合っているか、よく考えてから制度を選びましょう。
一般NISAやつみたてNISAを始めてみよう
一般NISAとつみたてNISAの特徴やメリット・デメリットについて紹介しました。
デメリットで元本割れの可能性を上げましたが、過剰に怖がる必要はなく、リスクとして把握し、理解しておくことが最も重要です。
特に、20年にわたって運用益が非課税となるメリットを受けられるつみたてNISAは、初心者にとっても投資で資産形成をしやすい制度です。
一般NISAは株式の売買に自信のある中級者以上におすすめできる制度です。
老後の不安を少しでも軽減するために、非課税制度の一般NISAやつみたてNISAを始めてみてはいかがでしょうか。