仕組債とは、債券(有価証券)にデリバティブ(金融派生商品)やオプション等の特別な仕組みをつけた金融商品です。仕組債の発行者であるアレンジャーと呼ばれる人が、様々な仕組みを債券に付けるのです。
仕組債は証券会社や銀行などの金融機関で購入できます。仕組債は最低投資金額が大きいということもあり富裕層を中心に人気のある投資商品です。5,000万円以上で購入する仕組債は、発行体や利回り・参照する指標・想定リターンなど様々な条件をアレンジすることができます。自分好みの商品にすることができるので富裕層のニーズも満たされるのです。
しかし仕組債の中には、条件をアレンジすることはできないものの、100万円程度から投資することができる商品もあります。
一般投資家でも投資することが可能な仕組債ですが、商品性が非常に複雑なためしっかり理解する必要があります。そこで今回は仕組債について詳しく説明していきます。
この記事の目次
仕組債とは
仕組債には様々な商品がありますが最も一般的なのがノックイン型仕組債です。ノックイン型仕組債は日経平均株価などの株価指数や個別企業の株式などに連動する商品です。
トルコリラやブラジルレアルなどの通貨に連動するリンク債といわれる仕組債もあります。ブラジルレアルなどの高金利の外貨で運用する仕組債は、利息も高いですが、リスクも高いです。
今回は最もポピュラーである日経平均株価にリンクしたノックイン型仕組債について説明します。
ノックイン型仕組債の特徴
この章では日経平均株価連動ノックイン型仕組債の特徴について説明します。
日経平均株価連動ノックイン型仕組債について理解するために以下の例で説明をします。
- 購入時の日経平均株価…20,000円
- ノックアウト価格…21,000円(105%)
- ノックイン価格… 12,000円(60%)
- 利率(クーポン)判定価格…16,000円(80%)
- 期間(満期)…5年
- 利回り…3%OR0.1%
- 判定日…3か月に1回
- 利払い日…3か月に1回
これらの条件は、販売会社から渡される目論見書に記載されています。仕組債の購入をする際は、目論見書の確認はしっかり行うようにしましょう。
これだけ見るとなんのことだかさっぱりわからないという方もいらっしゃると思います。ノックアウトやノックインなど聞き慣れない言葉が多いですが、順序立てて説明していきます。
仕組債の主な特徴は5つあります。
通常の債券に比べて高金利である
日経平均株価連動ノックイン型仕組債は、日経平均株価を参照指標にした仕組債です。通常の債券に比べて高金利(利子)がもらえることが特徴です。
3ヶ月に1回程度金利をもらうことができます。金利情勢によって受け取ることができる金利は異なってきますが平均すると2%から3%程度の商品が多いです。
条件を満たせば元本が保証される
高い金利を受け取ることができる仕組債ですが、仕組債の最大の特徴はノックイン価格まで日経平均株価が下落しない限り元本が保証されることです。
※ただし発行体が倒産(デフォルト)してしまった場合は元本の保障はありません。
一般的な日経平均株価連動ノックイン型仕組債の場合、ノックイン価格は60%程度で設定されていることが多いです。
購入時の日経平均株価が20,000円の場合、日経平均が20,000円の60%である1万2,000円まで下落しなければ元本は保証されます。
一般的な日経平均株価に連動するインデックスファンドの場合、日経平均株価が1円でも下落した場合、投資元本はマイナスになってしまいますので仕組債は元本の安全性が高い商品であるといえます。
ただしノックイン価格に1度でも到達してしまうと元本の保証はなくなります。
仕組債には満期がある
仕組債には満期があり一般的な仕組債は3年から5年が満期のことが多いです。
ノックイン価格に1度でも到達して、満期の時の日経平均株価が仕組債を購入したときの日経平均株価よりも低い場合は、満期時の日経平均株価の水準で戻ってくることになります。
例えばノックイン価格に到達して満期の時の日経平均価格が1万8,000円の場合、2万円の90%の水準なので戻ってくる元本は90%になります。つまり10%元本割れしたことになります。
しかし1度もノックイン価格に到達しなければ、満期の時の日経平均株価に関わらず元本の100%戻ってくる商品です。
満期前にお金が戻ってくる可能性がある
仕組債には満期がありますが満期前にお金が戻ってくる可能性もあります。満期の時にお金が戻ってくることを満期償還といい、早期にお金が戻ってくることを早期償還といいます。債券はお金が現金化されることを償還といい、戻ってくるお金を償還金といいます。
早期償還の判定をするのがノックアウト価格です。3ヶ月に1度ほど判定日というものがありその時の日経平均株価がノックアウト価格を超えている場合、早期償還されます。
つまり満期が3年や5年の場合でも判定日が3ヶ月に1回の場合、最初の判定日にノックアウト価格を超えていれば3ヶ月で元本が戻ってくることになります。
ノックアウト価格は仕組債購入時の日経平均株価の105%程度で設定されていることが多いです。日経平均株価が20,000円の場合ノックアウト価格は21,000円ということになります。
判定日にこの21,000円に到達していれば満期を待たずにお金が戻ってくるのです。
判定日によって受け取る金利は変わる
仕組債は金利にも特徴があります。判定日によって受け取ることができる金利は変わってきます。
判定日の時の日経平均株価がクーポン判定価格を超えていた場合は高い金利をもらうことができます。
逆に日経平均株価が低い場合は低い金利になってしまいます。一般的な仕組債の場合、高い金利は2%から3%で低い金利は0.1%ほどです。
クーポン判定価格は仕組債購入時の日経平均株価の80%程度に設定されていることが多いです。つまり日経平均株価が2万円の時に仕組債を購入した場合、クーポン判定価格は16,000円になります。
3ヶ月に1回の判定日にこの16,000円を超えていた場合、高いクーポンを受け取ることができるのです。
以上が仕組債の基本的な商品性になります。次の章からは仕組債のメリット・デメリットについて説明していきます。
仕組債のメリット
仕組債の主なメリットは2つです。
- 日経平均が多少下落しても元本は保証される
- 金利が高い
それぞれのメリットについて詳しく説明していきます。
日経平均株価が多少下落しても元本は保証される
日経平均連動ノックイン型仕組債の場合、日経平均株価がノックイン価格まで到達しない限り元本が割れる事はありません。
通常の日経平均株価に連動するインデックスファンドの場合は1円でも日経平均株価が下落すると元本は割れてしまいますが仕組債は日経平均株価が60%まで下落しない限り元本が保証されます。(ノックイン価格が60%の場合)
通常のインデックスファンドよりも元本の安全性が高い事は仕組債の大きなメリットと言えるでしょう。
金利が高い
日経平均連動ノックイン型仕組債の場合、金利が通常の債券よりも高いことが一般的です。仕組債はオプション取引やデリバティブ取引など複雑な金融手法を使って組成されている商品です。そのため通常の債券よりも金利が高いことが一般的です。現在の大手都市銀行の1年物の定期預金の金利は0.002%です。これに比べると大きく金利が高いことがわかります。
預金の利回りでは満足できない方にとって大きなメリットがあるといえます。
仕組債のデメリット
仕組債の主なデメリットは2つです。
- ノックイン価格に到達してしまうと元本が割れてしまう可能性が非常に高くなる。
- 中途解約ができない
それぞれのデメリットについて詳しく説明していきます。
ノックイン価格に到達すると元本割れの可能性が高い
仕組債は、ノックイン価格まで到達しないと元本は割れませんが、一度ノックイン価格に到達してしまうと元本が割れる可能性は極めて高くなります。
なぜなら日経平均株価などの株価や為替は上昇するスピードよりも下落するスピードの方が圧倒的に早いからです。
過去に様々な経済危機がありましたが下落するときのスピードはものすごいものがありました。しかし株価が戻るには何年もの時間がかかります。つまりノックイン価格に到達してしまうと元本を戻すのが難しくなってしまうのです。
中途解約ができない
仕組債は基本的に中途解約することができません。クーポン判定価格を割れてしまうと低い金利をずっと受け続けなければいけなくなってしまいます。
つまりキャッシュフローが極めて悪くなってしまうことになります。中途解約ができれば良いのですが中途で売却すると元本は大幅に損失してしまいます。
まとめ
今回は仕組債の代表例として日経平均株価連動ノックイン型仕組債について説明をしました。仕組債は富裕層を中心によく売れる商品ではありますが大きなリスクもあります。
仕組債は決して元本が変動しない商品ではないということをしっかり理解するようにしましょう。