新型コロナウイルスが世界的に拡大して各国の経済活動が止まったとき、「VIX」や「恐怖指数」というキーワードが頻繁に報道されました。これは投資家心理が悪化すると上昇する指数で、コロナショックに伴って急上昇したため、「今後の経済は大丈夫なのか?」という文脈で報じられたのです。
字面から怖さが伝わってくる指数ですが、上手く使えば利益に変えることもできます。VIXの変動を利用した投資をして、コロナショックで儲けた投資家は少なくないでしょう。
そこで、この記事では市場の暴落時に利益を出せるVIXへの投資について、利益を出せる仕組みや初心者でもできるのかなどを考えていきます。
まずはVIX先物とはどんな商品なのか、基礎知識を身につけていきましょう。いきなりVIX先物について解説すると難しくなってしまうので、「VIX」「先物取引」「VIX先物」の順に説明していきます。
この記事の目次
VIXとは?
VIX(ビックス)は「恐怖指数」と呼ばれている指標です。多くの投資家が市場の先行きに対して不安を感じて行動すると、VIXが上昇するので、恐怖指数と呼ばれています。
VIXは市場が安定しているときは10~20で推移する指数なのですが、経済危機に陥ると40以上に上ることもあります。2020年のコロナショックや2008年のリーマンショック時には80を超える歴史的な上昇を記録しました。投資家の不安に比例する数値と思っていただければ問題ありません。
ちなみに、VIXは「VIX指数」と呼ばれることもあります。VIXの正式名称は「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」で、指数を意味する「インデックス」という言葉が入っているので、筆者はVIXとだけ言えば十分と考えています。この記事ではVIXで統一していきますが、VIXもVIX指数も同じものですので、覚えておいていただければと思います。
VIXの計算方法
VIXの計算方法については、一般的な株価平均(日経平均株価やS&P500など)と異なり難しいです。VIXは米国のシカゴ・オプション取引所(CBOE)がS&P500のオプション取引の値動きを基に算出して公表しているのですが、具体的な計算方法は難しいので理解できなくても心配ありません。
とにかく、経済危機や株式市場の急落時など市場が不安定で投資家心理が悪化しているとき、VIXは上昇すると理解していただければ十分です。反対に、市場が安定していて投資家ものんびりできているときは、VIXは下落して10から20の低い値で推移します。
先物取引とは?
先物取引とは、将来の決められた日(期日)に、あらかじめ決められた価格で商品を売買することを約束する取引です。今から先物取引を行う場合、「どの商品を何個」「何円で」「何日に」売買するかを決めておきます。期日が来たら、あらかじめ約束した商品・個数・価格で受け渡しをします。
複雑な取引ですが、先物取引は価格変動する商品を決まった値段で買えるメリットがあります。例えば、金のように日々値動きする商品を買う場合、「今はお金が無いから、来月買おう」と思っているうちに値上がりして変えなくなってしまうかもしれません。ですが、金を売りたい人に「来月1日に〇円で売ってもらえませんか?」と相談して交渉が成立すれば、その後の値動きに関係なく決めた値段で売買できます。これが先物取引の仕組みです。
先物取引はリスクヘッジに役立つ
「将来の価格を固定できる」という先物取引の長所は、投資におけるリスクヘッジに役立ちます。普通に株式投資をする場合は価格変動が前提で、「安く買って高く売る」ことを目指しますよね。この価格変動をさせないのが先物取引で、「高く買って安く売る失敗」を避けるリスクヘッジに使えるのです。
具体例を考えて理解を深めていきましょう。例えば、今あなたが持っている株の株価が、これから下落すると予想したと仮定します。このままだと損失を出してしまうので、保有株式を売る人が多いでしょう。
しかし、確実に値下がりすると分かっているわけではないので、「本当に今売るべきなのか、もう少し待った方が良いのではないか」と迷うわけです。このようなときは保有株式は売らずに、株式の先物を売り建てておきます。将来の決まった価格で株式を売れる約束をしておく、ということですね。
予想どおり相場が下落したら、保有株式の値下がりによる損失が出ます。しかし、先物を買い戻すことで利益が出るので、損失を相殺することができます。予想が外れて値上がりしたら、先物取引による損失は出ますが、保有株式の値上がりによる利益が出ます。どちらに転んでも大損しないようにリスクヘッジするため、先物取引が重宝されるのです。
VIX先物とは?
VIX先物とは、その名のとおりVIXを売買する先物取引のことです。株安予想が増えると、市場の先行きに不安が広がるということなので、VIX先物を買おうとする人が増える傾向があります。株高予想が増えると、経済が健康な状態にあると考える人が増えるということなので、VIX先物を売ろうとする人が増えます。
VIXにそのまま連動する商品であれば分かりやすいのですが、そのような商品は上場していません。上場しているのがVIX先物なので、こちらで取引するしかないというわけです。
日本でVIX先物に投資する方法
日本に住んでいる日本人がVIX先物に投資する場合、証券取引所に上場している銘柄である、VIX短期先物指数(1552)を使うのが一般的です。三菱UFJ国際投信が管理するETFです。
管理会社も「短期投資には向いているけど、中長期投資には向かない」と言っているように、短期的なリスクヘッジに使える商品です。一般的な投資商品である投資信託や株式のように、長期的なバイ・アンド・ホールドには向きません。そのため、相場の先行きの不確実性が高まっているときにだけ使う、上級者向けの商品と言えるでしょう。
VIX先物は初心者でもできる?
はっきり言って、投資の初心者にはVIX先物はおすすめできません。一般的な株式市場や経済成長と連動しないVIXは値動きが読みにくく、さらに「先物取引」という複雑な取引が重なることで、非常に難易度が高い投資方法になっているからです。
この記事ではVIXや先物についてできるだけ易しく解説してきましたが、ちんぷんかんぷんな方もいらっしゃると思います。初心者で知識が追い付かないと感じるなら、他の投資方法を考えるのがおすすめです。他にも投資で稼ぐ方法はたくさんあります。
しかし、コロナショックで市場の変動幅が大きくなっている今、VIXの変動を活かして利益を上げたい気持ちも分かります。そこでおすすめしたいのが、CFDです。
初心者には分かりやすいCFDがおすすめ
CFDは「Contract For Difference」の略で、「差金決済取引」という取引です。FXのトレード対象を外貨だけでなくもっと拡大したような取引で、株式や金などさまざまな商品を売買します。商品を「安く買って高く売る」または「高く売って安く買い戻す」といった手法で、差額を利益とします。
CFDなら、VIXにも投資することができます。具体的には米国VIという商品で、これは基本的にVIXに連動して価格変動するシンプルな商品です。中国で新型コロナウイルスが発生した2019年12月末頃に米国VIを買った人は、その後の混乱によるVIXの急上昇で大儲けができたのではないでしょうか。
その他、米国VIブルETFや米国VIベアETFといった、米国VIをカスタマイズしたような商品もあります。米国VIブルETFは、VIXの1.5倍の変動幅で連動することを目指すCFDです。米国VIベアETFは、VIXの0.5倍の変動幅で「逆連動」することを目指すCFDです。米国VIの取引に慣れてきたら、これらの商品を活用してみても良いでしょう。
まとめ
コロナショックのように市場が暴落するとき、VIXが上昇します。これを使って利益を出すことができるのですが、VIX先物はリスクヘッジのための短期投資が基本的な使い方なので、ガンガン利益を追求するには向かない商品でしょう。
VIXが動くときは相場の不確実性が高まっているので、難易度が高い投資方法ではあるのですが、ハイリスク・ハイリターンで大幅な利益を狙えることも事実です。この機会に挑戦する方は、リスクに備えた資金管理に注意しつつ、大きなリターンを目指していただければと思います。