日銀がETFの買い入れ額を増額ってどういう事?

”日銀がETFの買い入れ額を増額”といったニュースが流れてきて、ETFって何?日銀は何をやってるの?と疑問に思ったことはありませんか?

しかも、コロナ禍の景気を支えるために買い入れ額が増えているのですが、行き過ぎると大きなデメリットもあるのです。

この記事では、ETFの意味や日銀がETFを買い入れる理由についてお伝えしていきます。

投資家のみならず、日本に住んでいるなら絶対に知っておきたい経済の基礎知識なので、一緒に学んでいきましょう。

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日銀がETFを買い入れる理由

株価が暴落
日銀がETFを買い入れるのは、「物価の安定」と「金融システムの安定」のためです。なぜETFを始めとする金融資産を買い入れることで物価や金融システムが安定するのか、順を追って見ていきましょう。

景気が悪くなると、個人投資家や機関投資家はこれらの金融資産を売って現金化します。金融資産ではなく、現金や預金として手元に置いておこうとする人が増えるのです。

こうなると市場にお金が回らなくなり、景気がさらに悪化して金融システムが崩壊する可能性が出てきます

景気の悪化に歯止めをかけるには、売られる金融資産をたくさん買う人がいれば良いですよね。その役割を買って出ているのが日銀です。

日銀がETFを買うことで、企業の株式が間接的に買われるので、市場にお金が回ります。お金が回ることで借入コストとなる実質金利が低下しますし、株が買われれば企業の資産価値は上昇します。こうすることで、景気の悪化を防ごうとしているのです。

ETFとは?

ETFという用語を初めて聞いた人のために、意味を解説しておきましょう。

ETFは「上場投資信託」のことで、投資信託の一種です。日銀だけでなく個人の投資家も売買することができます。

投資信託とは、投資家の資金を投資会社が預かって運用する商品のことです。ETFも投資会社によって運用されていますが、株式と同様に証券取引所で売買できる特徴があります。一般的な投資信託は証券取引所ではなく、銀行や証券会社を通じて購入するので、ここが大きな違いとなります。

ETFは基本的に株価指数などに連動する商品です。例えば、TOPIXや日経平均株価などの株式市場を平均化したような指数です。

ETFを運用する投資会社は、これらの指数を構成する銘柄を大量に保有しているため、ETFの運用成績が概ね指数に連動するのです。究極の分散投資と言っても良いでしょう。

まとめると、ETFを購入することは、TOPIXや日経平均株価を構成する銘柄全体を購入すること、と言い換えられます。日銀が特定の企業の株式を買うわけにはいかないので、ETFを買うことによって日本の企業全体の株式を買い支えている、と言えます。

日銀が買い入れるETF

日銀は、年間約6兆円(コロナ禍の前)を投じてETFを買い入れています。買い入れ対象のETFとその金額は、以下の表のようにまとめられます。

投資対象 投資額
TOPIX 4.2兆円
TOPIX、日経平均株価、JPX日経インデックス400 1.5兆円
設備・人材投資ETF 0.3兆円

TOPIXの比重が大きくなっているのは、TOPIXの方が幅広い銘柄を代表しているからです。TOPIXの構成銘柄の数は約2000ですが、日経平均株価は225銘柄です。

かつ、ファーストリテイリングやソフトバンクグループなどの銘柄に偏っており、これらの株価が動くだけで日経平均株価も動くことがあります。TOPIXの方が個別の株価に左右されにくいので、幅広く色々な企業の銘柄を買って経済全体を支えたい日銀の思惑に合っています

新型コロナとETF買い入れ

コロナ感染防止のためマスク姿で仕事をする人たち
先ほどは日銀が年間6兆円を投じてETFを買い入れていることを説明しましたが、2020年からは少々様子が異なります。新型コロナウイルス感染拡大が経済に深刻なダメージを与えたことを受け、日銀がさらなる金融緩和に着手しなければならなくなったからです。

ETF買い入れ額は、6兆円から12兆円に引き延ばされました。コロナ禍によって株価が大きく下がったのは有名ですが、日銀がETF買いによって支えていなければ、もっと大きく下落していた可能性があります。

12兆円どころか、もっとETFを買って景気を上向かせてほしい!と思った方もいるかもしれません。しかし、日銀がETFを買いすぎるのも逆効果になる危険があるのです。

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日銀がETFを買い入れるデメリット

景気を支えるために日銀はETFを買っていますが、やりすぎるとデメリットが大きくなってきます。特に今はコロナ禍を乗り切るために、どんな手段でも使わなければいけないときです。

コロナ後の社会やコロナ禍から抜け出す前の社会に深刻な影響を与える可能性があるので、デメリットについても見ていきましょう。主に以下の3つのデメリットがあります。

  1. 企業のガバナンスの低下
  2. 株価と企業価値の乖離
  3. 一部の株式のバブル化

企業のガバナンスの低下

日銀はETFを介して間接的に企業の株式を買っているので、買い入れが進むほど、企業の株主としての存在感が大きくなります。直接の株主になるのはETFを運用する投資会社ですが、ここではわかりやすく解説したいため日銀が株主になる、と考えます。

日銀が保有する株式の割合が増えるほど、機関投資家や個人投資家の株式の割合が減ります。つまり、株主総会での議決権を持つ人が少なくなってしまいます。

株主は企業が健全な経営をしているかなどを見張る役割も担っているので、議決権を持つ人が少なくなると、企業のガバナンスが働かなくなる危険があります。日銀の議決権が増えたところで、企業に対して意見することは無いからです

株主の発言力が弱いと、企業の経営がずさんになる可能性があります。最悪の場合、倒産するリスクもあるのです。日銀は日本の経済を支えるためにETFを買い入れているのに、やりすぎると本末転倒な結果を招くかもしれません

株価と企業価値の乖離

本来、株価は企業の資産など企業価値を反映しているものです。そのため、企業の業績が悪化すれば株価が下がり、良くなれば株価が上がります。自社や株主のためには株価が上がった方が良いので、業績を上げる努力をします。

しかし、「日銀はETFを買い入れて間接的に株式を購入する」と宣言してしまったら、どうなるのでしょうか。どんなに悪い業績を叩き出す企業でも、ETFに組み込まれている銘柄なら日銀が買ってくれる、という意味になりますよね。

そのため、業績が悪化している企業の株式も日銀によって支えられ、株価が高くなってしまう可能性があるのです。これを逆手に取って、ずさんな経営をしても日銀が株を買ってくれるから問題ない、と考える経営者が出てくるリスクもあります。

このように、日銀がETFを買うことで、本来の企業価値と株価が乖離してしまう可能性があります。投資家が将来有望な企業を応援するのが株式投資なのに、「なんでも買うよ」という人(日銀)が現れたら、システムが崩壊するリスクも持ち上がってきて当然です。

一部の株式のバブル化

もともと発行数が少ない株式は、日銀が買うことでさらに数が減っていきます。それが優良企業の株式なら皆が欲しがる状態になるかもしれません。

すると、需要ばかり高まってしまい、市場にある少ない株式を奪い合うことになるかもしれません。こうなると価格がどんどん上昇し、株式がバブル化する可能性が出てきます

バブル化の過程で儲けられる投資家もいるかもしれませんが、バブル崩壊によって大損する投資家も出てくると考えられます。経済的なダメージというよりは、私たち個人投資家が気をつけるべきデメリットですが、日銀のETF買い入れによる一つの悪影響と言えるでしょう。

ETF買い入れは今後長期にわたって注視する必要がある

興味深く経済ニュースを見る夫婦
日銀がETFを買い入れる理由とそのデメリットについてお伝えしてきました。筆者としては、買い入れの金額が少なければ有効な金融政策だと考えています

しかし、新型コロナウイルスの影響で買い入れ額を増やしたことが、将来的にどのように影響するかは未知の世界です。
ETFの買い入れは2010年に始まったばかりで歴史が浅いこともあり、まだ誰も正解なのか不正解なのかが分からないからです。

どんな影響があるのか、今後長期にわたって注視していく必要があるでしょう。

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