決算短信の見方を覚えよう!有価証券報告書との違いも解説

株式投資を始めるにあたり、企業の決算書を読めるようになっておくことは重要です。

決算書には様々なものがありますが、中でも決算短信について調べている人もいらっしゃるのではないでしょうか?

実は決算短信は、決算書の速報版であり、見方を知っておけば銘柄を選定する際にも役立てることができます。

そこで今回は株式投資の銘柄選定の際に見ておくべき、決算短信について詳しく解説していきたいと思います。

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決算短信とは?

まずは決算短信についてまとめた一覧表があるので、以下をご覧ください。

項目
記載内容
開示日
決算日から45日以内
書かれている情報
財務諸表などの基本的な情報
監査の義務
なし

それぞれについて説明していきます。

決算短信の開示日

まず開示日ですが、決算短信は原則として決算日から45日以内に開示することが義務付けられています。たとえば3月決算の企業であれば5月15日に閲覧可能です。

上場企業であれば年4回の四半期決算を行うことになっているため、決算短信も同様に年4回作成されます。ただし四半期決算の決算短信は決算日から30日以内に提出することが目安となっています。

決算短信に書かれている情報

続いて決算短信に書かれている情報についてです。

決算短信は決算の速報版という位置づけのため、決算情報を短くまとめていることが特徴です。そのため財務諸表など基本的な情報しか載っていません。

決算短信の監査の義務

最後に監査の義務についてです。

決算短信は監査法人による会計監査の義務がありません。そのため一部では仮の数字なども適用されることもあります。決算短信は投資家に対して、スピーディーな情報を届けるものと理解しておくといいでしょう。

決算短信はどこで見られるのか

企業の決算短信は以下の3つの場所で確認することができます。

では決算に際し公開される有価証券報告書と、どのような違いがあるのでしょうか?以下で詳しく見ていくことにしましょう。

有価証券報告書との違いは?

有価証券報告書
決算短信と有価証券報告書の違いについて、簡単な一覧表があるため以下をご覧ください。

決算短信 有価証券報告書
開示日 決算日から45日以内 決算日から3か月以内
監査の義務 なし あり
提出義務の会社 上場企業 一定の条件を満たした会社

有価証券報告書の開示日

まず開示日ですが、決算短信が決算日から45日以内に対し、有価証券報告書3か月以内となっています。したがって3月決算の企業の場合、6月下旬にならなければ有価証券報告書を入手することができません。

また有価証券報告書は決算短信に比べ情報量も多く、「従業員の給与」や「設備投資の状況」「役員報酬」など、銘柄分析をする上で有益な情報が細かく記載されています。このように多くの情報を記載するため、開示までに時間がかかってしまうのです。

有価証券報告書の監査の義務

続いて監査の義務についてです。

先述のとおり、決算短信には監査法人による監査義務はありませんでした。ところが有価証券報告書は決算情報の確定版という位置づけであるため、金融商品取引法に基づき作成され、外部の専門家に決算情報が適正であることを認めてもらう必要があります

有価証券報告書は監査法人や公認会計士によるしっかりとした監査がなされるため、決算におけるもっとも信頼できる情報であるといえるでしょう。

有価証券報告書の提出義務

最後に提出義務の会社についてです。

決算短信については、証券取引所の自主規制として上場企業に作成と開示の義務があります。一方有価証券報告書は金融商品取引法により開示が求められるものであり、それぞれ提出義務となる会社が異なります。

有価証券報告書の提出義務となる会社は以下のとおりです。

  • 金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者
  • 店頭登録されている有価証券の発行者
  • 募集または売り出しにあたり、有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券の発行者
  • 所有者数が1000人以上の株券(株券を受託有価証券とする有価証券信託受益証券及び株券にかかる権利を表示している預託証券を含む。)または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く。)、及び所有者数が500人以上のみなし有価証券(ただし、総出資金額が1億円未満のものを除く。)

引用元:関東財務局 企業内容等開示(ディスクロージャー)制度の概要

ここまで決算短信についてと有価証券報告書との違いについて見てきました。では株式の銘柄分析において、決算短信のどこに注目すればいいのでしょうか?以下で詳しく解説していきます。

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決算短信の見るべきポイントは3つ!

パソコンで決算短信を確認する
決算短信の見るべきポイントは以下の3つだけです。

  1. 連結経営成績
  2. 連結財政状態
  3. 連結キャッシュ・フローの状況

決算短信を見れるようになっておけば、企業の経営状況をいち早く知ることができるでしょう。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。

①連結経営成績

引用元:ニトリホールディングス2021年2月期決算短信

決算短信を見るとまず最初に書かている項目が「連結経営成績」です。連結経営成績には「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」など、損益計算書を簡単に記した内容が書かれています。

まず「売上高」ですが、その企業が製品やサービスを販売して売り上げた金額です。売上高が増えれば企業の規模も拡大し、株価も上がる傾向にあります。

しかし売上高はあくまで製品やサービスを販売して売り上げた金額であり、そこから販売するためにかかった人件費や仕入れなどが差し引かれます。このように販売にかかった費用のことを「売上原価」や「販管費および一般管理費」といいます。

そして売上高から売上原価や販管費および一般管理費を差し引いた金額が「利益」です。さらに「利益」は以下の3種類に分けられます。

  • 営業利益
  • 経常利益
  • 純利益

まず「営業利益」ですが、いわゆる「本業の儲け」といわれ、この数字がしっかりプラスを保てていれば、本業で利益が出せていると判断できます。

そして営業利益に本業以外で稼いだ利益である「営業外収益」を加算し、本業以外で発生した損失である「営業外費用」を差し引いて残った金額が「経常利益」です。最後に法人税等を支払い、最終的に残った金額が「純利益」となります。まとめると以下のようになります。

  • 営業利益=売上高-(売上原価+販管費および一般管理費)
  • 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
  • 純利益=経常利益-法人税等

続いて連結財政状態について見ていきましょう。

②連結財政状態

引用元:JR東日本2021年3月期 第1四半期決算短信

「連結財政状態」には企業の資産の状態を確認できます。有価証券報告書の「貸借対照表」を簡単にまとめたものと理解するとわかりやすいでしょう。連結財政状態には、「総資産」と「純資産」「自己資本比率」が記載されています

まず「総資産」ですが、決算情報をまとまた時点での企業の総資産を表しています。そして総資産とよく混同されるのが「純資産」です。総資産と純資産の明確な違いは、他人の資産が含まれているかいないかです。純資産とは以下のように表されます。

  • 純資産=総資産-負債(他人の資産)

たとえば借入金などがある場合、総資産では借入金も含めますが、純資産では借入金を差し引いて算出されます。

最後に「自己資本比率」ですが、総資産に対する自己資本の割合を示したものです。自己資本比率が高い企業は、財務状態が健全であるといわれ、業種によりますが40%以上が健全である目安といわれます。

では最後に「連結キャッシュ・フローの状況」について説明していきます。

③連結キャッシュ・フローの状況

引用元:花王2019年12月期決算短信

利益をしっかり確保し、財務状態が健全な企業であっても、資金が上手く回らず倒産してしまうことがあります。その際にお金の流れを把握することが大切であり、それを確認する資料が「連結キャッシュ・フローの状況」です

「連結キャッシュ・フローの状況」には、「営業によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つの項目があります。

まず「営業活動によるキャッシュ・フロー」ですが、本業でどれくらい稼いだのかを確認できます。ここがプラスであれば、企業が事業でお金を稼いでおり、マイナスであれば資金を食いつぶしていることが確認できるでしょう。

続いて「投資活動によるキャッシュ・フロー」ですが、企業が設備投資や何らかの事業への投資を行ったかを確認することができます。マイナスになっているということは、設備投資などを行いお金を使っており、プラスであれば資産売却などでお金を得ていることがわかります。

最後に「財務活動によるキャッシュ・フロー」ですが、銀行からの借入や返済、株式の発行などを行ったかを表します。プラスであれば借入れなどを行ったことがわかり、マイナスは借入金を返済したと判断できるでしょう。

決算短信で早めに情報を仕入れて取引に活かそう

株式投資セミナーの講師
決算短信とはどのような資料なのかご理解頂けたでしょうか?

決算短信はあくまで有価証券報告書の「速報版」であると理解しておきましょう。
そのため仮の数字で算出することもあるため、決算短信だけで企業の状況を全て確認できるわけではないことに注意してください。

ただ株式投資は「噂で買って事実で売る」という格言もあるため、決算短信で早めに情報を仕入れておくことは、利益を得るためには活用しておきたい資料といえます。

見るべきポイントをしっかり抑えて、銘柄分析に役立ててくださいね。

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