日本は海外と比べて長寿企業が多いことで有名です。
創業から100年経っても存続している企業のことを「100年企業」と言いますが、このような企業は外国だとあまり多くはないのです。
100年企業という呼び方の他、老舗企業や伝統企業と呼ばれることもあります。
この記事では、上場企業には何社の100年企業があり、なぜ日本には長寿企業が多いのかを解説していきます。100年企業に投資するメリット・デメリットも解説するので、株式の銘柄選びにも役立つでしょう。
この記事の目次
上場している100年企業
日本の証券取引所に上場しているのは約3700社ですが、そのうち約560社が100年企業です(2020年6月時点)。約15%を100年企業が占めている状態です。
100年企業はどのようなビジネスをしている会社が多いのかと言うと、製造業、小売業、卸売業が多いです。飲料メーカーのキリンホールディングス、楽器・AV機器・半導体・ゴルフ用品と幅広く手掛けるメーカーのヤマハ、筆記用具メーカーのパイロットコーポレーションなどが代表的です。誰もが知っており、昔からある企業という印象の顔ぶれだと思います。
日本に100年企業が多い理由
冒頭でも触れたとおり、日本は海外に比べて企業の寿命が長い傾向があります。上場・非上場に関係なく企業の数を集計すると、日本は約3万3000社で世界一位です。全体の企業数に占める100年企業の割合も、41.3%で日本がダントツです。
順位 | 国 | 100年企業の数 | 100年企業の割合 |
---|---|---|---|
1位 | 日本 | 33,076 | 41.3% |
2位 | 米国 | 19,497 | 24.4% |
3位 | スウェーデン | 13,997 | 17.5% |
4位 | ドイツ | 4,947 | 6.2% |
5位 | 英国 | 1,861 | 2.3% |
出典:周年事業ラボ『創業100年企業の国別ランキング』
表を見ると、100年企業が日本に多いことが一目瞭然で分かります。
ちなみに日本には、現存する会社の中で世界最古の企業もあるほど。その会社は「金剛組」で、飛鳥時代の578年に創業された社寺専門の建築会社です。
さて、日本に長寿企業が多い理由ですが、環境の変化に左右されにくい製造業が多いことが挙げられます。キリンホールディングスやヤマハ、パイロットコーポレーションなどは、大勢の人が日常的に使うものを生産しており、需要が低下しにくいビジネスを営んでいます。そのため、ビジネス領域をコロコロ変えずとも時代に取り残されることがなく、生き残りやすいのです。
また、建設関係の会社も長寿企業が多いです。日本は神社や寺の建設技術を持つ企業が代々継承してきたため、一流の技術を備えています。それだけでなく、近年多発する地震に対応するため、耐震・免震の技術も開発が進んでいます。このように、時代の変化に柔軟に対応し、昔の技術を基にさらに良いものを作っていく企業も生き残りやすいです。
言い換えれば、IT企業のように流行に乗ってビジネスを拡大していく企業では、100年企業のように歴史ある企業はありません(別業種からの転換を除く)。AIやビッグデータ、仮想通貨などの新しい技術を売りにする企業も、多くはスタートアップ企業です。
その他の要因として、親子代々で事業を承継していく意識が根付いていることも挙げられます。規模が小さい100年企業の場合、親から子へと3代以上続いており、創業から100年続いているケースもあります。
100年企業に投資するメリット
上場企業の約15%が100年企業なので、100年企業を選んで投資することもできます。長く続いてきた企業ならではの投資メリットがあるので、2つご紹介していきましょう。
- 今後も安定した業績が期待できる
- 値動きが安定している
今後も安定した業績が期待できる
100年企業は、東日本大震災や阪神大震災、そして戦争などさまざまな混乱を経験してきました。多くの企業が倒産してきましたが。100年企業には、それらの荒波をかいくぐってきた経験があり、これからも時代の変化に柔軟に対応できると期待できます。そのため、今後も安定した業績が期待できるのです。
新型コロナウイルスの拡大によって多くの企業が休業を強いられ、倒産する企業も出てきています。ビフォーコロナ時代とウィズコロナ、アフターコロナ時代とでは、私たちの生活も変わるとされています。このような大きな変化に対応できない企業は、倒産してしまうでしょう。
100年企業も例外なく苦しい状況に立たされていますが、乗り越えられるポテンシャルもあると考えられます。
リスクの低い投資をしたいなら、100年企業は投資先の筆頭候補になるでしょう。
値動きが安定している
上場している100年企業は、株価の値動きが安定している傾向にあります。歴史の浅い企業は値動きが荒いので、それに比べると安定しているイメージです。
100年企業は昔からあってネームバリューもあるため、数十年前から保有している投資家も大勢います。彼らは既に投資額を上回る配当を得ているため、業績が悪くなったり外部環境が悪くなったりしても、株式を売らないことが多いです。株価への興味より、今後も配当や株主優待をもらい続けたい、と考えているわけですね。
絶対値下がりしないとまでは言い切れないのですが、売りたい人が少ない銘柄は値下がりしにくい特徴があります。
そのため、株価の上下で一喜一憂するのがストレスになってしまう人には、100年企業への投資がおすすめです。
100年企業に投資するデメリット
100年企業には業績が安定しているメリットがある反面、デメリットもあります。以下の2つのデメリットも理解した上で、投資をしていきましょう。
- 大きな成長は期待できない
- 1単元の投資額が高い
大きな成長は期待できない
上場している100年企業は、既にほとんどが大企業で安定成長の段階に入っています。そのため、これから数年で株価が10倍に跳ね上がるような急成長は期待できません。安定したローリスク・ローリターンの投資を求める人向けの銘柄、と言えるでしょう。
ハイリスク・ハイリターンの投資を求めるなら、ITなど新しいビジネスを営む企業か、AIや自動運転など流行のテーマに関連する企業に投資するのがおすすめです。また、これらの成長銘柄と100年企業の株式を組み合わせ、リスクを中程度に調整するのも良いでしょう。
1単元の投資額が高い
100年企業は知名度などのため、既に大勢の投資家に買われている銘柄です。株価が上がり切っている状態であることが多く、1単元の購入に必要な資金が高い場合があります。
東証一部に上場する100年企業の株価を見てみると、1000円~3000円の銘柄が多いです。1単元100株ごとの売買になるので、1単元買うのに10万円~30万円の資金が必要になります。株式投資では一般的な金額の範囲ですが、少々高く感じる方もいるのではないでしょうか。
銘柄によっては、もっと大きな資金が必要な場合もあります。人気の任天堂の株価は約5万円なので、1単元買うのに500万円の資金が必要です。上場している100年企業は約560社と決して多くはないので、自分にぴったりの銘柄が必ず見つかるとは限らない点が、デメリットと言えるでしょう。
ローリスク・ローリターンの投資にうってつけの銘柄
約3700の上場企業のうち、100年続く「100年企業」は約560社あります。これらの銘柄の魅力は、業績が安定しており、値動きも安定していることです。
今後の急成長を期待しにくいデメリットもあるのですが、ローリスク・ローリターンの投資にうってつけの銘柄です。
100年企業の中から投資先を選んでみてはいかがでしょうか。
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他にも銘柄の選び方を知りたい
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