2016年にリンダ・グラットン氏の著書『ライフ・シフト』が日本で刊行され、大きな話題となりました。書店の店頭にズラリと『LIFE SHIFT』と書かれた本が並んでおり、壮観だったことを今でも覚えています。
彼女は著書の中で、”私たちは生き方を変えなければならない”と主張しています。「確かに」と共感する方もいれば、「何をどう変えれば良いの?」と疑問を抱く方も多いでしょう。
この記事では、現代人に求められる「ライフ・シフト」とは何か、そして今からやるべき準備について解説していきます。
この記事の目次
ライフ・シフトとは?
ライフ・シフトとは、「生き方」を「シフト」する、つまり直訳すると「生き方を変えること」という意味です。グラットン氏は、人生100年時代に生きる私たちは、今までとは生き方を変えなければならない、と言っているのです。
重要なのは、どうして変える必要があり、どんな風に変えれば良いかです。これを理解してから行動しなければ、流行の書籍に流される人になってしまいますよね。次の項目では、まずどうして変える必要があるのか、ライフ・シフトの必要性について見ていきましょう。
リンダ・グラットン (著):LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
なぜライフ・シフトの必要があるのか?
どうして生き方を変える必要があるのかは、以下のような三段論法で説明できます。詳しく見ていきましょう。
1. 人間の寿命が延びている
2. 従来の社会の仕組みは合わなくなってきている
3. 老後の生活は自分で準備する必要がある
人間の寿命が延びている
日本人の平均寿命が延びていることは、皆さんもご存じだと思います。日本の人口は1億2000万人強ですが、そのうち100歳以上の人口は7万人を超えています。少し前までは100歳まで生きることは非常に珍しいことのように感じられましたが、当たり前になりつつあるのです。
『ライフ・シフト』で示されたデータによると、日本では2007年に生まれた子どもの半分が、107歳まで生きる可能性があるそうです。これからも寿命は延びていくだろうと解釈できますよね。
今すでに大人になっている人も、無関係な話ではありません。自分の両親や祖父母よりも長生きするだろう、と考えられるからです。
長寿化は一見おめでたいことのように感じられますが、お金の面では心配事も増えてしまいます。
長生きするほど生活に必要なお金がかかるので、老後にお金が足りなくなってしまうリスクが上がるからです。
従来の社会の仕組みは合わなくなってきている
長寿化にともなって社会の仕組みも少しずつ変わるのが理想ですが、簡単に変えられるほど柔軟な仕組みではありません。国や会社は80歳くらいの寿命を想定した仕組みを作っているのですが、これは100歳まで生きる人にとっては合わない仕組みです。
例えば、日本の企業は終身雇用と言われていますが、現在の一般的な定年は60歳から65歳です。100歳まで生きると仮定すると、退職後の第二の人生は35年から40年とかなり長いです。この期間を無収入で過ごすことになる不安があるため、再就職や定年の延長が勧められるのです。
また、少子化や核家族化によって、若い世代が高齢者の面倒を見るモデルも崩壊しつつあります。昔は年金に加えて働き盛りの世代が家計を支えていましたが、不景気が普通となった現在では若い人も自分や家族を養うのに必死なので、高齢者の生活を支える余裕が無いのも当然でしょう。
このように、寿命の長期化と社会の仕組みにはギャップがあるのです。そのため、旧来の生き方をしていると高齢になってから後悔するかもしれず、「ライフ・シフト」が求められているのです。
老後の生活は自分で準備する必要がある
国や会社が80歳まで生きることを前提に仕組みを作っているなら、100年生きると仮定した場合、あと20年の生活費は自力で稼がなければなりません。
80歳になってお金が無くなってから慌てるのでは遅いので、できるだけ若いうちからこの事実を理解し、備えておく必要があります。
グラットン氏が『ライフ・シフト』で説いていることを簡単にまとめると、以上のように言えるでしょう。
老後の生活を見据えて準備する、といえば、2019年に話題となった「老後2000万円問題」を思い出しませんか?老後2000万円問題で想定されている寿命は100歳ではないので、ライフ・シフトとは異なる考え方から生まれたものなのですが、老後のお金は自分で準備しなければならない点では共通しています。
ライフ・シフトの考え方や老後2000万円問題から、若い頃から老後のお金の準備をする重要さが分かってきます。
それでは、具体的にはどんなことをすれば良いのか解説していきましょう。
ライフ・シフトのために今からできること
人生100年時代を幸せに生き抜くには、やっぱりお金が必要です。以下の3つのポイントを理解し、老後に備えて資産を形成しましょう。
1. 長く続けられる仕事を選ぶ
2. 貯金の習慣を身につける
3. 投資で不労所得を作る
長く続けられる仕事を選ぶ
高齢になってからもできる仕事に就くことは、高齢化社会を生き抜く重要なポイントです。現在の一般的な定年は60歳から65歳ですが、延長されるかもしれないからです。また、年金が少ないからといった理由で働かなければならない場合もあり、70歳や80歳になっても仕事を続けるかもしれないからです。
このようにお伝えすると、「80歳まで働くなんて冗談じゃない!」と怒られてしまうことが多いです。しかし筆者としては、長く続けたくない仕事を選んでいることを自覚していただければ良いな、と思います。好きな仕事であれば、何歳までだって続けたいと思うものではないでしょうか?
体力が必要で若い人にしかできない仕事があるのも事実です。しかし、高齢になっても積極的に続けられる仕事に就いていれば、老後にお金が足りなくなる不安もかなり軽減されるはずです。ライフ・シフトはお金の問題だけでなく「生き方を変えること」なので、生き方を見直すきっかけにしていただければと思います。
貯金の習慣を身につける
貯金の習慣が身についていない人は、今すぐに考え方をシフトしましょう。毎月1万円や1000円など、無理のない金額で良いので、お金を貯める習慣を身につけていきましょう。貯金が無い人は老後にお金が足りなくなるリスクが上がります。
貯金を始めるなら、「天引き貯金」がおすすめです。給料が振り込まれたら、そのお金を使う前に、1万円など決めた金額を貯金用の口座に移すのです。こうしておけば、銀行口座にまだお金があるからといって使いすぎることもなく、貯金を続けられます。
貯金の習慣が無い人は、老後にお金が足りなくなって困ってしまうかもしれません。老後にゆとりある暮らしをするために、少しで良いので浪費や消費を我慢し、貯金をしていきましょう。
投資で不労所得を作る
投資で不労所得を作っておけば、年金が少なくても大丈夫な可能性があります。株式投資でもらえる配当金や、不動産投資でもらえる家賃収入は、自分が働けなくてももらえる収入です。仕事をいつまで続けられるか分からない高齢者になると、特に威力を発揮する収入になります。
株式投資や不動産投資を始めるには、初期投資としてある程度のお金がかかるので、高齢者になってから始めるのでは遅いと考えるのが一般的です。若い頃から始めて不労所得が入れば、現役で仕事をしている頃から生活費の足しになるお金が入ってくるので、一石二鳥です。
ライフ・シフトとは、より良く生きるための考え方
リンダ・グラットン氏が著書『ライフ・シフト』の中で論じた考え方や、人生100年時代を生きる日本人はどんな準備をすれば良いのかなどについてお伝えしてきました。
記事の中ではお金のことを主にお伝えしましたが、「ライフ・シフト」とはお金を貯めることだけでなく、生き方を見直してより良く生きるための考え方です。
貯蓄や投資の準備はもちろんのこと、長く勤められる仕事を選ぶなど、根本的なところから見直していくヒントになればと思います。