株式投資でセクターを意識する。使い方と注意点を徹底解説

株式投資の最初のハードルといえば、どの銘柄に投資するかではないでしょうか? 東京証券取引所のデータによると、2020年11月5日現在の上場会社数は3,731社あり、これらを1つずつ見ていくことはとても大変な作業です。

実はこのような場合、セクターで分類してみると銘柄が探しやすくなります。

そこで今回は株式投資で銘柄分析を効率的に行うために、セクターについて詳しく解説していきます。

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株式投資のセクターとは?

SMBC日興証券サイト画面
参考:SMBC日興証券『初めてでもわかりやすい用語集

株式投資のセクターとは、企業の業種などに分類したものことです。業種以外にも発行株数や株価、最新技術などのテーマ別に分ける場合もあります。

東京証券取引所はこのセクターを全部で33種類に分けており、基本的には各セクターの株価は同じような動きをするといわれます。たとえば「銀行業」「小売業」「化学」「輸送用機器」「食料品」などに分け、セクター別の割安性や成長性などを分析し、投資の判断材料とすることも可能です。

最近でいえば、新型コロナウイルスの影響を受けたセクターと、全く影響を受けなかったセクターで大きな差が現れました。中でも緊急事態宣言で自粛ムードが高まった時期では、「サービス業」のセクターの株価が落ち込んだ一方、自宅に滞在する時間が増えたことで「通信業」などのセクターが伸びています。

このようにセクターごとに銘柄を見ていけば、銘柄分析を効率的に進めていくことができるようになります。

セクターごとに銘柄を見ていくと良い理由は?

セクターごとに銘柄分析をするメリットを、もう少し詳しく見ていきましょう。株式投資でセクターを意識すると、それぞれ動きが異なるセクターの銘柄を組み合わせることで、リスクヘッジができるようになります。

たとえば好況時に強いセクターと、不況時に強いセクターの銘柄をそれぞれ自分のポートフォリオに入れてみます。具体的には以下のようなイメージです。

セクターを意識したリスクヘッジ

<好況時に強いセクター>
電気機器、銀行業、化学、建設業、輸送用機器

<不況時に強いセクター>
電気・ガス、食料品、医薬品

投資金額に対して、好況時に強いセクターを50%、不況時に強いセクターを50%を保有することで、バランスの取れたポートフォリオが形成されます。こうすることで不況時にも株価が安定的に保たれ、損失を最小限に抑えることが可能です。

つまり株式投資では、各セクターの動きを理解しておけばリスクヘッジが行える、ということです。では各セクターの動きをもう少し詳しく見ていきましょう。

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セクター別の株価の動き

新型コロナウィルスの報道
ここでは、以下の4つの動きに分けてセクター別の株価の動きを見ていきます。

  • 景気に敏感なセクター
  • 景気変動の影響を受けにくいセクター
  • 為替や海外経済に影響を受けるセクター
  • 金利の影響を受けるセクター

景気に敏感なセクター

景気に敏感なセクターは以下のとおりです。

素材・化学、自動車・輸送用機器、機械、電気・精密機器

素材・化学のセクターは国内外の景気の動きに左右されやすく、中でも化学製品は自動車などに多く使われることがあり、景気が落ち込むと自動車が売れなくなり、化学業界も影響を受けます。また化学の原材料である原油(ナフサ)の価格に影響を受ける傾向にあります。

素材・化学のセクターの代表的な銘柄は、三菱ケミカルHD、住友化学、信越化学工業、東レなどです。

続いて自動車・輸送用機器も景気の動きに左右されます。自動車に関していえば、裾野が広く、エンジンなどの部品をはじめ、外装のプラスチック製品、塗料、タイヤメーカーなど多くのメーカーが影響してきます。

自動車・輸送用機器の代表的な銘柄は、トヨタ自動車、DENSO、本田技研工業、ブリヂストン、関西ペイントなどです。

機械に関しても自動車と似たような特徴があり、完成品メーカーだけでなく、下請けのメーカーに与える影響も大きくなります。

機械の代表的な銘柄は、三菱重工業、ディスコ、ダイキン工業、クボタなどです。

電気・精密機器のセクターはキヤノンやカシオなど私たち一般消費者に馴染みのある銘柄もあれば、BtoB向けの事業が主なキーエンスやファナック、DMG森精機などもあります。また最近では「Apple関連銘柄」として、コンデンサーで有名な村田製作所などは市場から注目される銘柄です。

これらの銘柄も景気が良くなるほど消費の需要が増すことが多いため、景気に敏感な代表的なセクターといえるでしょう。

電子・精密機器の代表的な銘柄は、上記の他にも日立製作所、パナソニック、東京エレクトロンなどです。

景気の影響を受けにくいセクター

景気の影響を受けにくいセクターは以下のとおりです。

食品、医薬品、情報通信、電力・ガス、陸運業

食品や医薬品は生活必需品といわれ、私たちが生きていくためにはかかせない製品を扱っています。そのため景気の良し悪しによって株価が変動しにくいことが特徴です。

ただしそれぞれ注意点もあります。まず食品に関しては、原材料を輸入に頼っていることが多いため、為替の動きに影響を受け場合があります。また医薬品に関しては、生命に関わる重要な役割を果たしていることから、国内外の規制により業績が左右されることもあるでしょう。

食品の代表的な銘柄は、明治HD、日清食品、東洋水産などで、医薬品は武田薬品工業、塩野義製薬、小野薬品工業などです。

続けて情報通信や電力・ガスも、私たちの生活を支える大切なインフラであることから、景気の影響を受けにくいとされています。ただし電力・ガスについては、資源価格の影響を受けることに注意しましょう。

情報通信の代表的な銘柄として、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIなどが挙げられます。電力・ガスの代表的な銘柄は、東京電力、東京ガスなどです。

最後に陸運業に関しても比較的景気の影響を受けにくいとされています。しかし今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛の影響で業績が大きく落ち込んだ企業が多くありました。確かに景気に左右はされにくいですが、人の動きが止まってしまうことで、電車やバスの利用が減るため、業績への影響は無視できないでしょう。

陸運業の代表的な銘柄は、JR東日本、JR東海、東急、東武などです。

為替や海外経済に影響を受けるセクター

為替や海外経済に影響を受けるセクターは、景気に敏感なセクターと似たような動きをすることが多いです。ここではとりわけ為替や海外経済に影響を受けるセクターを挙げていきます。

石油・石炭製品、自動車・輸送用機器、鉄鋼・非鉄金属、機械、電気・精密機器、商社(卸売り)

日本企業は輸出や現地生産など比率が高い企業が多く、為替や海外経済に影響を受けやすい銘柄が多くあります。たとえばトヨタ自動車の生産台数の3分の2は海外生産となっており、中でもアメリカと中国の市場規模が大きいです。

まず石油・石炭製品ですが、日本が資源国でないことから、原油価格などに大きく左右されます。原油価格は為替や海外経済はもちろん、OPEC(石油輸出機構)が価格を操作しており、外部要因によって業績が大きく左右されます。

石油・石炭製品の代表的な銘柄は、JXTG HD、出光興産、国際石油開発帝石です。

続いて鉄鋼・非鉄金属ですが、中国の経済に大きく影響を受けます。鉄鋼に関しては中国が生産量も消費量も世界一です。

鉄鋼・非鉄金属の代表的な銘柄は、日本製鉄、JFE HD、住友電気工業などです。

最後に商社(卸売り)ですが、幅広いモノやサービスを扱いますが、資源関連の依存度が高い傾向にあります。そのため石油・石炭製品同様に資源価格の影響を受けやすくなります。

商社(卸売り)の代表的な銘柄は、三菱商事、住友商事、三井物産などです。

金利の影響を受けるセクター

最後に紹介するセクターが、金利の影響を受けるセクターです。少しイメージしにくいセクターですが、私たちの生活に馴染みのある業種が含まれます。

銀行業、保険業、証券業、不動産業

銀行の収益源となるのは、貸付けによる利息収入です。たとえば私たちがマイホームを購入する際の住宅ローンや、企業へ貸付けなどが挙げられます。金利が高ければその分、収益も増していきますが、金利が低いと収益に大きな影響を受けてしまいます。

特に最近は日本銀行が超低金利政策をとっていることから、銀行業は厳しい環境となっているといえるでしょう。

銀行業の代表的な銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループなどです。

銀行業と同様に金利の影響を受ける業種が、保険業と証券業です。保険業や証券業は銀行とは異なる収益モデルですが、金利の上下によって業績が大きく左右されます。

保険業、証券業の代表的な銘柄は、日本生命相互保険、東京海上HD、野村HD、大和証券グループ本社などです。

最後に不動産業ですが、金利とは関係ないように思われるかもしれませんが、実は金利にとても影響を受けやすい業種です。金利が下がると借入れをする人が増えて不動産に対する需要が高まります。特に低金利の環境下では不動産を投資目的で購入する人も増えます。

不動産業の代表的な銘柄は、三井不動産、住友不動産、東京建物などです。

セクター内でも動きが異なる場合もお忘れなく

ここまでセクター別の特徴や代表的な銘柄まで見てきました。もちろん、同じセクターであれば似たような株価の動きになることがありますが、常に各銘柄が同じ動きにならないことを理解しておきましょう。

株価は景気や金利だけではなく、企業の将来性やM&A、ヒット商品など様々な個別要因によっても動きます。そのため銘柄分析では、マクロ的にセクター分析をし、ミクロ的に個別銘柄についても細かく分析をしてから投資を判断するようにしましょう。

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