ロボアドバイザーによる資産運用サービスを手掛けるウェルスナビが、2020年12月に東証マザーズ市場に上場を果たしました。近年投資業界で賑わいを見せているロボアドバイザーに興味を持つ方は多いです。
投資の知識がなくてもお金を増やせそう
投資を勉強する時間がなくても、すぐに安全に始められそう
投資について消極的な人にも、かんたん手軽に取り組みやすいイメージがあります。
しかし気になることが、話題性の裏に隠れているロボアドバイザーのデメリット。そこで今回はロボアドバイザーのデメリットについて徹底解説するとともに、向いている人、向いていない人までお伝えしていきます。
この記事を読めば、あなたがロボアドバイザーによる投資をすべきかそうでないかがわかります。
この記事の目次
ロボアドバイザーについておさらい
ロボアドバイザーについてご存知の方も多いかと思いますが、今一度ここでおさらいをしておきます。
ロボアドバイザーとは、投資経験が全くない人のためでも手軽に始められるように作られた投資サービスです。「投資」というと多くの場合、株式投資などをイメージされる方が多いですが、そこで壁となることが「どの企業の株式を買えばいいのか?」です。
同じように、最近認知度が上がってきているiDeCoやNISAなどでも、基本的に数種類の投資信託などを自分で選択する必要があります。
しかしロボアドバイザーは、このような「金融商品を選択する手間を省いてくれる」ため、投資経験が全くない人でも手軽に始められる特徴があります。基本的には口座開設をして、簡単な質問に回答するだけで、自分に合った最適なポートフォリオ(資産設計)をシステムが作ってくれます。
さらに一度ロボアドバイザーを始めれば、その後は基本的に放置で大丈夫。その時の市況の変化に合わせて自動的に資産の入れ替えなども行ってくれます。
貯蓄から投資への流れを受けて資産運用の必要性が叫ばれる中、金融教育を受けてきていない日本人にとっては、誰でも手軽に始められる投資サービスの一つといえます。
ロボアドバイザーの5つのデメリット
それではここから具体的にロボアドバイザーのデメリットを見ていきます。誰でも手軽に知識なしでも始められる一方、デメリットが存在するのも事実。これを理解せずに始めてはいけません。
ロボアドバイザーの5つのデメリット
- 自分で運用するよりも手数料が高い
- 短期で大きく利益を期待することは難しい
- 元本割れのリスクがある
- NISA口座の対象外
- 自分自身の投資スキルアップにつながりにくい
①自分で運用するよりも手数料が高い
ロボアドバイザーは資産設計から、その後の管理まで全てお任せできる投資サービスです。そのため管理費など人的コストがどうしても発生します。自分で株式投資や投資信託を購入し、運用する場合と異なり一定の手数料が常に発生することは避けれらません。
たとえば冒頭で触れた、ロボアドバイザー最大手ウェルスナビでは、年率で預かり資産の1%の手数料が発生します。投資信託でも同じように保有期間中に発生する「信託報酬」というものが存在します。
しかし近年、信託報酬の値下げ合戦が繰り広げられており、信託報酬が1%を超える投資信託の数は少なくなってきています。最近では年0.1%を下回る投資信託も誕生しています。また株式投資では運用するのは自分自身であるため、購入時と売却時に証券会社に支払う手数料しか発生しません。
1%の手数料が高いのか、安いのかそれぞれ人の判断によりますが、最近の投資信託などと比較するとロボアドバイザーの手数料は割高といえます。
②短期で大きく利益を期待することは難しい
ロボアドバイザーは短期で大きく利益を出せるものではありません。ロボアドバイザーは人によって、リスクの取り方などポートフォリオが異なりますが、どんなにリスクが高くても短期的に大きな利益を得ることは難しいです。
たとえば「○○社の株価が1日で△円上昇。これにより売却益が1日で□円出しました」、「FXでわずか30分で◇円の大幅な利益を得られました」、など自分で運用することにより、短期で大きな利益を得ることができるのも投資の魅力です。(短期で大幅な利益が得られるチャンスがある一方、それと同等のリスクがあることを忘れずに。)
しかしロボアドバイザーの場合は、様々な資産に分散して投資をしていくことが基本のため、1日や2日で大幅に利益を得る仕組みではないのです。
これをメリットとして捉えるならば、”大幅な利益を期待できない分、大幅な損失を被る可能性も低い”ということです。
③元本割れのリスクがある
ロボアドバイザーといえども、リスクを取って運用しているため元本割れのリスクは常に存在します。ロボアドバイザーを提供する会社は複数存在しますが、今のところ完全に元本保証してくれるサービスはありません。
そもそも投資で利益を求めるのであれば、それ相応のリスクは常に存在します。
元本割れをどうしても避けたい場合は、期待できる利益は低いですが、定期預金などに限られます。
④NISA口座の対象外
貯蓄から投資の流れを受けて、政府肝いりの政策であるNISA(少額投資非課税制度)。NISAの専用口座を開設すると、そこで得た利益は全て非課税となります。
たとえば株式や投資信託を売却して利益を得ると、利益に対して所得税と住民税合わせて20.315%(復興特別所得税を含む)が課税されます。つまり得た利益に対して約2割が税金として抜かれてしまうのです。
投資で得た利益を丸々受け取ることができるNISA口座に注目が集まっていますが、残念ながらロボアドバイザーはNISAの対象外。つまりロボアドバイザーで利益を得ると、得た利益に対して20.315%の税金が課税されてしいます。
これからロボアドバイザーサービスが、NISAの対象になる可能性はゼロではありませんが、今のところそのような動きはありません。
⑤自分自身の投資スキルアップにつながりにくい
ロボアドバイザーは、ポートフォリオの設計から管理まで全て全自動です。そのため投資家は放置で運用できてしまうため、自分自身の投資のスキルアップをすることが難しいです。
それでも運用が上手くいった、上手くいっていない状況を見て、その際はどのようなポートフォリオで運用していたのかなどを口座内で確認する事は可能です。やり方次第ではスキルアップが可能ということです。
ロボアドバイザーに向いている人
それではここからロボアドバイザーサービスに向く人をお伝えしていきます。
ロボアドバイザーに向く人
- 資産運用をしたいけど知識に自信がない人
- まずは少額から投資したい人
①資産運用をしたいけど知識に自信がない人
資産運用を始めるには投資に関するある程度の知識が必要ですが、ロボアドバイザーは特別な投資の知識を必要せず始められます。そのため資産運用を始めたいけど、知識面で自信がない人にとってロボアドバイザーはありがたい存在です。
投資信託も資産運用の初心者向けに作られた金融商品ですが、それでも日本には約6,000本の投資信託が存在します。まずはこの数多くの投資信託を選ぶ必要があります。投資信託によってリスク度合いが異なるため、「どれを選んでもいい」というわけにはいきません。
その点ロボアドバイザーは、投資知識に自信がない、または全くない方でも、今すぐに始められるわけです。
②まずは少額から投資したい人
ロボアドバイザーを利用する会社によりますが、最低投資金額は1,000円から1万円に設定されていることが多く、少額から気軽に投資が始められます。
株式投資の場合、1単元が100株からの購入となり、1株1,000円の銘柄であっても10万円の投資資金が必要になります。また当然ではありますが、投資した10万円は全てこの銘柄の株価に依存します。そのためこの銘柄を発行する企業の業績などに大きく左右されてしまうのです。
一方で、ロボアドバイザーは少額であっても、自動で広く分散投資をしてくれるため、リスクの軽減も図ってくれます。
ロボアドバイザーに向かない人
それではロボアドバイザーに向かない人についても見ていきましょう。
ロボアドバイザーに向かない人
- 自分で資産運用の勉強をしたい人
- NISA口座を利用したい人
①自分で資産運用の勉強をしたい人
ロボアドバイザーのデメリットの部分でも触れましたが、将来的に自分で資産運用をしていきたいと考えている人にはロボアドバイザーはお勧めできません。確かに資産運用は常にリスクと隣合わせで上手く利益を上げることができる時もあれば、大きく損失を被ることもあります。
それでも自分で経験したことは今後の大きな財産となります。投資で受けた損失は勉強代と捉えればいいのです。ロボアドバイザーは便利な反面、資産運用の勉強の機会は皆無といっていいため、自分で資産運用したい人は”向かない”ということです。
②NISA口座を利用したい人
こちらも先ほどのデメリットの部分で触れましたが、非課税口座であるNISAはロボアドバイザーは対象外です。税金は発生しても、自分で運用するよりかはAIなどシステムが自動的に運用してくれた方がいい、と思えるのであればロボアドバイザーを利用する価値はあります。
どうしてもNISA口座を利用したい場合は、たとえば1万円はロボアドバイザーに、1万円はNISAにというように併用することも頭に入れておくと良いです。
利用している会社が倒産してしまったら?
最後にもしロボアドバイザーを利用している会社が倒産してしまったらどうなるのか説明していきます。結論からいうと、もし利用している会社が倒産してしまってもしっかりと資産は守られます。
これは金融商品取引法で、金融機関は自分の会社の資産と顧客の資産は分けて管理しなければならない、と定められているためです。このような管理の方法を分別管理といいます。
一方で、株式投資の場合は保有している銘柄を発行する会社が倒産してしまうと、株価はほぼ無価値となります。0円になることはないですが10万円が1万円以下に、という具合に大きな損失となります。
ロボアドバイザーは会社倒産のリスクについては、気にしなくても良い商品ということです。
ロボアドバイザーの運用実績や手数料を徹底比較 https://t.co/1qmDl1ILGV
— インベスターズ・キャンプ (@investors_camp) November 26, 2020
投資が怖い人はロボアドバイザーから始めてみて
ロボアドバイザーは便利で知識がなくても始められる投資商品です。その反面、デメリットがいくつか存在します。
手数料が割高ということは、運用実績に直接関わってくることです。長期で運用した際に、どれくらいの額が手数料としてかかってくるのかは理解しておくべきです。
そして筆者としては、投資のスキルアップにつながりにくい、という点が大きなデメリットだとお伝えします。どのような投資でもリスクは常にあります。損失を受けてしまっても、それは勉強代ととらえ、次の投資に活かせばいいのです。投資を始めて一度も負けたことがない人はいません。皆さんトライアンドエラーの繰り返しで、着実に投資のスキルアップを行っているのです。
それでも、「いつか投資の知識がついたら…」と何も行動に移さないよりは、少額からでもロボアドバイザーを始めてみてください。投資初心者の入り口商品としては、うってつけの商品です。