オプション取引とは「権利の売買」をする取引のことをいいます。しかし「権利の売買」といわれても、イメージすることは難しいのではないでしょうか?
特にこれまで株式投資や投資信託などを取引されてきた方にとって、オプション取引は売買方法が特殊で理解することに苦労されることが多いです。
そこで今回は、オプション取引の仕組みや利点、注意点について、初めての方でもイメージしやすいように解説していきます。
この記事の目次
オプション取引の仕組みはシンプル
オプション取引の仕組みは意外とシンプルです。例を使って説明していきます。
たとえば車やスマホを購入する時に、店員さんに「オプションは付けますか?」と聞かれたことがあるでしょう。金融の分野での「オプション取引」も、車やスマホを購入する時のオプションと同じです。
車の購入価格プラス10万円でカーナビが付けられる、スマホの本体価格と別途で毎月300円で本体の保障が付けられる、などのオプションを利用された方もいらっしゃると思います。これらのオプションは、必要でなければ付けなくても大丈夫です。
つまりオプション取引とは、「自分の都合に合わせて使うか使わないかを選択する権利」といえます。自分にとって必要であれば権利を行使し、必要でなければ権利を行使しないということです。
もう少し具体的に見てみます。たとえば現在の日経平均株価が10,000円として、半年後に日経平均株価が上がると予測します。
この時、「日経平均株価(原資産)を半年後に1万円で買う権利」をオプション料500円で購入します。そして半年後に日経平均株価が11,000円になれば、オプション料を差し引き500円の利益を得ます(11,000円-10,000円-500円)。一方、半年後に日経平均株価が9,000円に落ちてしまった場合、権利を放棄してオプション料500円分の損失だけで済むのです。
取引の仕組みそのものはシンプルなのですが、売買の方法が複雑であるため、イメージしにくいのがオプション取引の特徴です。以下でオプション取引の売買方法について詳しく解説していきます。
オプション取引には4つのパターンがある
オプション取引には、以下の4つのパターンがあります。
オプション取引の4つのパターン
- コールオプションの買い
- コールオプションの売り
- プットオプションの買い
- プットオプションの売り
「コール」とは買う権利のことで、「プット」が売る権利のことです。そして「コール」と「プット」には必ず買い手と売り手が存在します。これらを表にすると以下のようになります。
コール(買う権利) | プット(売る権利) | |
買い手 | コールの買い 買う権利の保有者 (行使か放棄を選択) |
プットの買い 売る権利の保有者 (行使か放棄を選択) |
売り手 | コールの売り 買う権利の付与者 (売る義務を負う) |
プットの売り 売る権利の付与者 (買う義務を負う) |
参考:日本取引所グループ
また権利の行使についても2つのパターンがあり、満期までの間いつでも権利行使ができることを「アメリカンタイプ」、満期を迎えないと権利行使ができないことを「ヨーロピアンタイプ」といいます。アメリカンタイプの方が権利行使が自由にできるため、オプション料は高くなります。
ではオプション取引のパターンを1つずつ見ていきましょう。
①コールオプションの買い
コールオプションの買いは、今後日経平均株価などが上昇すると予想する時に行います。上記の例の場合、購入時は以下のようになります。
株価:12,050円
権利行使価格:12,000円
オプション料:300円
そしてこの場合の損益分岐点は以下のようになります。
12,000円(権利行使価格)+300円(オプション料)=12,300円
つまりこのコールオプションの買いは、日経平均株価が12,300円を超えれば利益となり、さらに日経平均株価が上昇すれば利益は拡大していきます。仮に日経平均株価が下落した場合、損失となりますが、オプション料の30万円(300円×1,000倍)に損失が限定されます。
②コールオプションの売り
コールオプションの売りは、今後日経平均株価などが一定の株価以上に上昇しないと予想する時に行います。上記の例の場合、購入時は以下のようになります。
株価:12,050円
権利行使価格:12,000円
オプション料:300円
そしてこの場合の損益分岐点は以下のようになります。
12,000円(権利行使価格)+300円(オプション料)=12,300円
つまりこのコールオプションの売りは、日経平均株価が12,300円を下回れば利益となりますが、オプション料の300円×1,000倍=30万円が利益の上限となります。オプション料は変わることがないため、株価がどれだけ下がっても利益の上限に変化がありません。
ただしコールオプションの売りは注意点があります。それは、もし日経平均株価が12,300円以上になった場合、損失が日経平均の上昇に連動して無限大に膨らむ可能性があるのです。そのためオプション取引の初心者は、なるべくコールオプションの売りは避けた方がいいでしょう。
③プットオプションの買い
プットオプションの買いは、今後日経平均株価などが下落すると予想する時に行います。上記の例の場合、購入時は以下のようになります。
株価:12,050円
権利行使価格:12,000円
オプション料:200円
そしてこの場合の損益分岐点は以下のようになります。
12,000円(権利行使価格)-200円(オプション料)=11,800円
つまりこのプットオプションの売りは、日経平均株価が11,800円を下回れば利益となり、さらに日経平均株価が下落すれば利益が膨らんでいきます。もし日経平均株価が予想と逆に11,800円より上昇したとしても、オプション料200円×1,000倍=20万円が損失の上限となります。
④プットオプションの売り
プットオプションの売りは、今後日経平均株価などが一定の株価以上に下落しないと予想する時に行います。上記の例の場合、購入時は以下のようになります。
株価:12,050円
権利行使価格:12,000円
オプション料:200円
そしてこの場合の損益分岐点は以下のようになります。
12,000円(権利行使価格)-200円(オプション料)=11,800円
つまりこのプットオプションの売りは、日経平均株価が11,800円を上回れば利益となりますが、オプション料の200円×1,000倍=20万円が利益の上限となります。
ただしプットオプションの売りも、コールオプションとは逆で、日経平均株価が11,800円を下回った場合、損失が無限大に拡大する可能性があります。コールオプションの売りと同様に、初心者はなるべく避けた方がいいでしょう。
それでは続いてオプション取引の利点について見ていくことにしましょう。
オプション取引の2つの利点
オプション取引には、以下の2つの利点があります。
オプション取引の利点
・損失を限定できる
・現物取引と組み合わせてリスクヘッジができる
利点①損失を限定できる
オプション取引の中でも「買い」から入れば、損失を限定することができます。
例を使って説明していきます。Aさんは車の購入を考えており、その車の現在の価格は300万円です。しかし今手元には250万円しかなく、半年後にボーナス50万円入るまで待たなければなりません。
しかしこの車は希少価値が高く、時間と共に価格が上昇する傾向があるのです。そのためボーナスが入る半年後には、300万円を超えてしまわないか心配になります。
しかし、何らかの理由によりこの車が半年後に値下がりする可能性もあるでしょう。そのためAさんはここで半年後に300万円で購入します、と約束はできないと考えています。仮にこの車が半年後に250万円になってしまった場合、300万円で購入しなければならないためです。
そこでAさんは「半年後に300万円で車を購入する権利」を1万円で買うことにしました。あくまで「権利」であるため、権利を行使し購入してもいいし、権利を放棄することもできます。いわゆる「プットオプションの買い」をしたわけです。
そして半年後、車の値段が350万円以上になっていたとしても、「半年後に300万円で車を購入する権利」を買っているため、権利を行使して300万円で車を購入できます。
一方でこの車の価格が250万円下がってしまった場合、「半年後に300万円で車を購入する権利」を行使せず、その時の価格である250万円で車を購入すればいいのです。この時、権利を放棄したため、「半年後に300万円で車を購入する権利」を購入した時に支払った1万円は返ってきませんが、損失を1万円に限定できます。
ただしこれは、コールまたはプットの「買い」を購入した場合です。先述のとおり、「売り」を購入した場合は、損失が無限大に拡大する可能性もあります。またオプション取引は「証拠金」を基に取引を行い、損失が膨らみ過ぎると、強制的に決済される可能性があるため注意しましょう。
利点②現物取引と組み合わせてリスクヘッジができる
オプション取引と現物取引を組み合わせることで、リスクヘッジすることも可能です。こちらも例を使って説明していきます。
まずAという株を現物で購入したとします。A株が上昇すれば利益を得ますが、下落すれば損失となります。ここで株価下落に対し、リスクヘッジをするためにプットオプションの買いを購入します。しかし信用取引という方法を用いて、A株を信用売りをすればいいのでは? と思われるかもしれません。
確かに信用取引でA株を売ればいいのですが、まず口座を開設している証券会社にA株がなければなりません。仮にA株がない場合は、証券会社が市場から調達してくるのですが、その場合別途手数料がかかります。さらに信用売りでA株を取引した場合、保有期間に応じて利息を支払う必要もできてます。
そこで株価下落のリスクヘッジとして、プットオプションの買いをするのです。もしA株が下落すればプットオプションは放棄すればよく、その場合もオプション料の支払いだけで損失をとどめることができるのです。
このように現物取引とオプション取引を上手く組み合わせることができれば、リスクヘッジをすることも可能になります。
オプション取引には専用口座が必要
参考:SBI証券公式サイト”先物・オプション取引の口座開設・お取引までの流れ”より
ここまでオプション取引について解説してきましたが、実は誰でもオプション取引ができるわけではありません。現物株式などを取引する時は、証券口座の特定口座だけで取引できますが、オプション取引には別途「先物・オプション取引口座」が必要となります。
そして先物・オプション取引口座は、証券会社によりますが、株式などの一定の取引経験がある、金融資産が500万円以上ある、など条件が設けられていることが多いです。先物・オプション取引口座の口座開設の申し込みを行い、審査を経て取引開始となります。
なお口座開設の申し込みと審査は誰でも行えますので、興味があればしてみてもいいでしょう。
基本的には4通りの方法だけ理解できればOK
オプション取引は、「わかりにくい」や「リスクがある」と認識されていることが多いです。確かに「権利を買う行為」は、私達の身近で行うことが少なく、それがイメージしにくい要因かもしれません。
基本的にオプション取引はコールオプションの買いと売り、プットオプションの買いと売りの4通りの方法しかありません。それぞれの特徴をよく理解して取引してみてください。
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