「仕組預金」についてご存知ですか?
仕組預金とは、普通の円預金にデリバティブ(金融派生商品)などの特殊な仕組みを組み込んだ預金商品のことをいいます。多くの銀行で仕組預金は販売していますが、なじみがある方は少ないでしょう。実は銀行に資産運用の相談をすると勧められる可能性のある金融商品です。
仕組預金は円預金のように見えますが、円預金とは全く違います。仕組預金を普通の円預金だと思っていると大変なことになります。
そこで今回は仕組預金について詳しく説明します。
この記事の目次
仕組預金とは
仕組預金には様々なタイプがありますが、代表的な仕組預金は、米ドルやユーロ、オーストラリアドルなどを組み込んだ商品です。
今回は米ドルを組み込んだ仕組預金について説明します。米ドルを組み込んだ仕組預金について理解できれば、あとは通貨が違うだけなので他の商品も理解することができます。少し複雑な商品ではありますが、順序立てて説明します。
仕組預金を説明するにあたって以下の条件を例にあげて説明します。
- 預入通貨…円
- 転換通貨…米ドル
- 預入期間…3カ月
- 金利…1パーセント
- 預入時の米ドル円のレート…100円
- 予約相場…98円
一般的な仕組預金は円から預け入れをします。満期は3ヶ月程度のものが多いです。満期日の少し前に判定日(通常は2営業日前)というものがあります。
判定日の米ドル円のレートが予約相場よりも円安の場合、元本と利息は円で戻ってきます。
判定日の米ドル円のレートが予約相場よりも円高の場合は、元本は米ドル・利息は円で戻ってきます。
上記の例で仮に100万円仕組預金にした場合、
予約相場よりも円安の場合 =>元本100万円と利息が約3,333円(税引き前)戻ってきます。
予約相場よりも円高の場合 =>米ドル預金約10,204ドル、利息が約3,333円(税引き前)戻ってきます。
※利息の計算式:100万円×1%×12分の4(3か月分)
※米ドルの計算式:100万円÷予約相場98円
元本の米ドルは、どのレートでドルに変わるかというと予約相場でドルに変わります。金利は予約相場よりも円安であろうと円高であろうと円で戻ってきます。
転換通貨が米ドルの場合の金利は、通常1%程度であることが多いです。現在の大手都市銀行の1年定期の金利は0.002%ですから、普通の円定期よりもはるかに高い金利を受け取ることができます。
ではこの仕組預金のメリットやデメリットは一体何でしょうか?次の章からは仕組預金のメリット、デメリットについて説明します。
仕組預金のメリット
仕組預金の主なメリットは3つあります。
- 通常の円定期預金よりも金利が高い
- 今すぐに外貨預金を購入するよりも良いレートで外貨預金を始めることができる
- 手数料がかからない
それぞれの理由について詳しく説明していきます。
通常の円定期預金よりも金利が高い
仕組預金の金利は通常の円定期預金よりも高いことが一般的です。先ほども説明しましたが現在の大手都市銀行の定期預金の金利は0.002%ほどです。
仕組預金では1%ほどの金利をもらえる商品も多いので、少しでも金利が高い商品に興味がある方にとっては大きなメリットといえるでしょう。
有利なレートで外貨預金を購入できる
仕組預金は判定日のレートによって外貨になるか円のまま戻ってくるかが決まる商品です。通常、予約相場は、仕組預金を預け入れる時の実勢相場よりも有利なレートなことが多いです。
つまり、仕組預金を購入するときの実勢相場よりも有利なレートで外貨預金を購入できる可能性があるということです。
もし外貨に変わらなくても円のまま戻ってくるだけなので、どうしても外貨に変えなければいけない人以外にはあまりリスクはないといえるでしょう。しかも円で戻ってきても高い金利は受け取ることができます。
円のままでも外貨になっても問題ない方にとって高い金利を受け取れることはメリットでしょう。
手数料がかからない
通常、金融商品を購入する際は手数料がかかることが一般的です。大手都市銀行で円から米ドルに替える場合1円かかります。しかし仕組預金を購入して米ドルに換わった場合には、手数料はかかりません。
もちろん円のまま戻ってきても手数料はかかりません。投資信託や株式等は手数料がかかることが一般的なので手数料がかからない金融商品というメリットは大きいでしょう。
外貨に換える時にどうしても手数料を払いたくない方にとってはメリットといえるでしょう。
仕組預金のデメリット
仕組預金にはメリットもありますが当然ですがデメリットもあります。仕組預金の主なデメリットは3つです。
- 為替が円高になった場合のリスクが高い
- 利益が限定される
- 中途解約ができない
それぞれのデメリットについて詳しく説明していきます。
為替が円高になった場合のリスクが高い
仕組預金は予約相場で外貨に換わる可能性がある商品です。予約相場は仕組預金を預け入れるときの相場よりも有利なケースが多いですが、外貨に変わるときの実勢相場は予約相場よりも円高でなければなりません。
つまり判定日の実勢レートが1ドル90円の場合であっても、前提条件のケースの場合だと1ドル98円でドルに変わってしまうのです。
ドルに変わった瞬間含み損を抱えることになります。為替の動きは誰にも分かりませんがこのケースの場合、円に戻すときに大きく損をしてしまう可能性があります。
利益が限定的
仕組預金は判定日の為替レートが予約相場よりも円安になっていた場合、元本も利息も円で戻ってくる商品です。
つまり為替がどんなに円安になっても受け取ることができる利益は利息のみということになります。もし判定日の為替レートが1ドル110円になっていた場合、仕組預金ではなく直接米ドル預金を購入した方が大きな利益を取ることができます。つまり仕組預金で大きく利益を取る事は不可能なのです。
中途解約ができない
仕組預金は満期まで原則解約することができません。もし解約をしてしまうと元本の半分以下になってしまうことが一般的です。大幅に元本割れする可能性があるので、仕組預金の契約する際は絶対に利用する予定のない余裕資金で購入することが絶対条件になるといえるでしょう。
筆者は仕組預金はおすすめできない
筆者の個人的意見としては、結論として仕組預金はおすすめできる金融商品ではありません。
利益は限定されてしまいますし、為替が大きく円高になってしまった場合のリスクは無限大になってしまうからです。金利がものすごく高ければ良いですが、今の金利情勢ではまず間違いなく高い金利を出すことができません。1%程度の金利で契約するにはあまりにもリスクが高い商品であるといえます。
もし銀行に資産運用の相談をしに行って仕組預金を勧められた場合は、はっきりと断ることが無難だと思います。
仕組預金はオプション料等の関係で銀行には大きな利益を与える商品です。ただ顧客側にとってはメリットが少ない商品といえます。見た目の金利に気を取られることなく、商品内容について理解を深めてから購入を決めてください。
取引をするかどうかは個々人の判断になりますが、個人的には仕組預金はおすすめできません。
まとめ
今回は仕組預金について詳しく説明しました。仕組預金の金利は一見すると魅力的なようにみえます。また手数料なく外貨に換えられると聞くとメリットが大きいと思う人もいるかもしれません。
しかし期待できるリターンが大きいということは、背負うリスクも同等に大きいというのが投資の原則です。メリットだけを説明されて購入を決めては、大きく損を出してしまうことがあるのです。
銀行や証券会社に相談に行く際は、あらかじめ、ある程度自分で商品を調べておく事が大切です。