資産運用をされている方なら、「ファンドマネージャー」という職業を聞いたことがあるでしょう。
ファンドマネージャーとは、顧客から集めたお金を運用する専門家で、主に投資信託の運用会社や保険会社、信託銀行になどに所属しています。
しかしファンドマネージャーがどのような仕事をしているのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、日々動くマーケットと対峙し、100億円…なかには1,000億円を超えるお金を動かすファンドマネージャーが、どのような仕事なのかについて詳しく解説していきます。
この記事の目次
ファンドマネージャーの1日とは?
ファンドマネージャーの1日はとてもハードです。マーケットが開く午前9時までにその日の情報を集めて分析する必要があり、起床時間はとても速いです。まずは一般的なファンドマネージャーのスケジュールを見てみましょう。
[box01 title="ファンドマネージャーの1日"]5:00:起床
6:30:出社
7:00:前日の海外市場の動きを確認
7:45:メールチェック、事務作業
8:30:ミーティング
9:00:日本の株式市場の開始
10:00:ミーティング
11:30:ランチミーティング
13:30:企業調査、訪問
16:00:決算説明会
18:00:帰社
19:00:業務終了
[/box01]上記の例では19時に業務が終了しますが、会社の状況や個人の状況、時期によって異なります。またこれら以外にも、顧客回りやプレゼン資料の作成、報告用の資料作成など様々な業務があります。
ファンドマネージャーは常に世界中の市場の動きにアンテナを張っている必要があり、日本の株式市場が開始される午前9時より前に業務を開始することがほとんどです。会社によっては、当日の日本経済新聞の読み合わせなどを行っていることもあり、情報収集はファンドマネージャーにとって特に重要な仕事といえるでしょう。
それでは以下でファンドマネージャーの仕事内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ファンドマネージャーの仕事内容
ファンドマネージャーの仕事内容は以下の大きく4つに分けられます。
- 市場調査
- 企業調査
- 投資判断
- ポートフォリオ管理[/box02]
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
①市場調査
市場調査は起床してから、出社するまでに済ませるファンドマネージャーが多いようです。特に前日の欧州市場と米国市場の動きを細かくチェックします。
中でも米国市場の動きは日本市場に与える影響が大きく、証券会社からのメールやBloomberg、ロイター、ウォールストリートジャーナルなどの経済情報サイトなどを用いて情報収集を行います。
またテレビ東京の「モーニングサテライト」を見ているファンドマネージャーも多いようです。もちろん株式市場だけでなく、要人発言や為替市場、CME、ADRなどの動きも細かくチェックします。
②企業調査
上場企業の財務諸表の分析や決算説明会に参加して、企業が投資対象かどうか調査を行います。なかには企業を直接訪問し、社員の雰囲気や社内の環境などを細かくチェックするファンドマネージャーもいるようです。
企業調査で重要なポイントは、会社の経営計画と実際の数字との乖離です。たとえば計画では営業利益が100億円と記載されており、実際は半分の50億円であった場合、なぜそのような状況に陥ったのかを徹底的に分析していきます。
このような会社側の計画と実際の数字の乖離は、会社の将来を大きく動かす要因が隠されています。もし計画よりも実際の数字が低い場合、計画が甘い可能性があり、投資対象に適さないと判断することがあるためです。
③投資判断
投資判断はファンドマネージャーの仕事の中でも、最も重要な部分でしょう。市場調査でマクロを分析し、企業調査でミクロを分析した結果、どの企業に投資をすべきか判断します。
特に最近では「ESG投資」といわれ、環境や社会性、企業統治をしっかり意識した経営をしていないと投資を避けることが多いです。またこれら以外にも、社会の課題に対するニーズを満たす事業を展開しているかもよく確認していきます。
ただし投資判断には、どうしても自分の主観的な意見が入ってしまうことがあります。そのため定期的にミーティングを行い、他のファンドマネージャーの意見や価値観などを尊重することも大切であるという方も多いです。
④ポートフォリオ管理
投資判断で投資を決めた企業などで構成されるポートフォリオは、定期的にチェックします。特に投資信託などは、投資目的が設定されていることが多く、目的通りの運用がなされているか細かくチェックする必要があるのです。
たとえば「日本株を20%、米国株を30%で運用していく」という投資信託の場合、日本株の運用成績がよくポートフォリオの割合が30%まで上昇した場合、日本株を売却するなどして、保有株式の調整を行います。
投資判断が最も重要であることは間違いありませんが、ポートフォリオ管理も同じくらい重要な仕事です。投資は買ったら終わりではなく、その後の状況を見ながら適切なタイミングで売却や買い増しをしていくことが大切です。
また同時にリスク管理も重要で、要人発言や政情不安などで、市場に悪影響を及ぼす可能性がある場合、ポートフォリオを調整することもあります。
ここまでファンドマネージャーの仕事内容について見てきましたが、ファンドマネージャーになるための条件や、なった場合の待遇はどのようになっているのでしょうか? 以下で見ていくことにします。
結果を出せなければクビになる可能性も
ファンドマネージャーは顧客のお金を預かっている以上、責任も重く運用で成績を残せないとクビになってしまうこともあります。外資系の金融機関では特に厳しく、結果を出せなければ数か月でクビになることもあるそうです。
ただし日本の金融機関であれば、成績を残せなくてもすぐにクビになることはなく、ある程度の猶予をもらえることがあります。ただしそれでも結果を出せない場合は、配置転換や降格といったことがあるようです。
そのような厳しい環境であるからこそ、給料は高めであることが多く、年収1,000万円以上受け取るファンドマネージャーも多くいます。さらにインセンティブもあるため、結果を出せば出すほど年収が高くなっていきます。
それでも精神的にも肉体的にもタフな人でなければ務まらず、中には自分の肉体に悪影響を及ぼす食べ物などを徹底的に避けるファンドマネージャーもいるようです。
ではファンドマネージャーは、どのようにしたらなれるのでしょうか? 以下でファンドマネージャーになる条件などを見ていきましょう。
ファンドマネージャーになるためには?
ファンドマネージャーになるためには、明確の条件などは設定されていませんが、学歴として「大卒以上」としている金融機関が多いようです。
ただしファンドマネージャーならほとんどの人が保有しているといわれる、「証券アナリスト」の資格はあるに越したことはないでしょう。証券アナリストの資格を取得するためには、第一次試験と第二次試験に合格する必要があり、さらに日本証券アナリスト協会の通信講座の受講が必要になります。
試験の内容は、「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」「財務分析」「経済」「職業倫理・行為基準」など、金融機関に勤めた経験がないと取得することが難しいでしょう。
成果を出す以外に生き残れない厳しい業界
華やかなイメージが多いファンドマネージャーですが、実は大きなプレッシャーや市場調査、企業調査など厳しい環境かつ地味な仕事が多いのも現状です。また仕事柄、結果が数字ではっきり表れるため、運用で成績を出す以外に生き残りができない大変厳しい世界といえます。
特に最近のように変化が激しい時代においては、投資で勝ち続けることも難しく、予想できないような事象が起きても適切に対処するスキルも必要です。
ファンドマネージャーのように私達も資産運用ができるとはいえませんが、彼らのように日々市場や企業の調査と、分析、学びは常に行っていくことは大切といえるでしょう。